環境省が選定する「脱炭素先行地域」とは?対象地域や補助金などきになるポイントを解説!

ESG
  • HOME
  • コラム
  • ESG
  • 環境省が選定する「脱炭素先行地域」とは?対象地域や補助金などきになるポイントを解説!
環境省が選定する「脱炭素先行地域」とは?対象地域や補助金などきになるポイントを解説!

日本が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて、各地で積極的な取り組みが進められています。その一環として注目されるのが「脱炭素先行地域」です。これらの地域は、地域特性を生かした独自の脱炭素化を進め、温室効果ガスの削減に貢献しています。環境省が選定した脱炭素先行地域は、地域課題解決と脱炭素化を同時に進める先駆的なモデルとして、全国で展開が期待されています。本コラムでは、脱炭素先行地域の概要や目的、選定プロセスなどを解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

脱炭素先行地域とは

脱炭素先行地域とは、2050年のカーボンニュートラルを達成するために、地域の特性に合わせた方法で温室効果ガスの削減目標に取り組む地域のことです。環境省の「地域脱炭素ロードマップ」に基づいており、その地域の自治体や民間企業、金融機関を中心として削減に取り組みます。
地域の特性というのは、漁業や農業のような産業や、地熱や水力などの再生可能エネルギー導入といった、「その地域ならでは」の要素を指しています。

脱炭素先行地域の目的

では脱炭素先行地域では、どのような目的に基づいて取り組みを進めているのでしょうか。

脱炭素先行地域では、地域資源を最大限に活用しながら、脱炭素推進や地域課題解決を同時に進めることを目的としています。特定の地域における「家庭部門」や「業務その他部門」と呼ばれる民生電力部門の取り組みを中心に行われます。また、これらの地域での成功事例や取り組みを他の地域に展開する方法を示すことも求められていることの1つです。

具体的な取り組みとしては、地域課題解決に向けた施策、脱炭素化を広げるための基盤づくり、再生可能エネルギーや先進的技術の導入を通じた地域資源の活用などが挙げられます。脱炭素社会の実現と地域の持続可能な発展が同時に進むことを目指しているため、日本がカーボンニュートラルを目指すうえで意義のある取り組みだといえるでしょう。

脱炭素先行地域の選定プロセス

では次に、どのようなプロセスを経て脱炭素先行地域の選定が行われているのか見ていきましょう。選考プロセスのフローは下記のとおりです。

脱炭素先行地域の選定プロセス
出典:脱炭素先行地域募集要領(第5回). (2024, February). 環境省. を基に弊社作成

①環境省が脱炭素先行地域の募集
②地方環境事務所(環境省の地方支分部局)に計画提案書を提出
③地方環境事務所から環境省本省へ回付
④評価委員会による評価(確認事項に関する審査)
⑤評価委員会による評価(先進性・モデル性に関する審査)
⑥評価委員会による評価(地域経済循環への貢献や事業性等を含む総合的な審査)
⑦環境省による脱炭素先行地域の選定・公表

第5回脱炭素先行地域の募集は2024年6月17日〜27日に行われ、選考結果は2024年9月27日に発表されています。なお2024年11月現在、第六回の脱炭素先行地域の募集期間についての情報はまだ公表されていません。

脱炭素先行地域の一覧

脱炭素先行地域には、日本各地で多様な取り組みが見られます。地域ごとの成功事例を参考にすることで、他の地域でも同様の取り組みが促進されることを目指しています。

第1回から第5回までの選定地域一覧

脱炭素先行地域
出典:脱炭素先行地域. 環境省 脱炭素地域づくり支援サイトより引用

2024年11月時点では、38都道府県、計82市町村(※1)が選定されています。(※2)
環境省は、2025年度までに100か所の脱炭素先行地域を選定することを掲げており、先行事例を基にした取り組みを2030年度までに実施する予定です。第5回が2024年6月に募集されており、過去5回が6〜9か月間隔で募集されているため、第6回は今冬に募集があるかもしれません。

(※1)共同で選定された市町村は主提案者のみ記載で、1カウント。
(※2)弊社調べでは第1回~第5回の累計が83提案となっており数値にズレがございます。(第4回の資料までは20と表記されていますが、第5回の資料内で数値にズレがありました。)

第1回から第5回の選定地域は以下の通りです。

脱炭素先行地域の選定地域
出典:第1回 脱炭素先行地域の概要. 環境省 / 第2回 脱炭素先行地域の概要. 環境省 / 第3回 脱炭素先行地域の概要. 環境省 / 第4回 脱炭素先行地域の概要. 環境省 / 第5回 脱炭素先行地域の概要. 環境省 を基に弊社作成

支援制度と交付金の活用方法

脱炭素先行地域に対しては、さまざまな支援制度や交付金が設けられています。これらの制度を活用することで、地域の脱炭素化がよりスムーズに進むことが期待されます。具体的な内容を見ていきましょう。

地域脱炭素推進交付金
出典:地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 事業概要. 環境省を基に弊社作成

脱炭素先行地域に関する交付金は主に以下の2種類です。

  • 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
  • 特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】

地域脱炭素移行・再エネ推進交付金は、

①脱炭素先行地域づくり事業への支援

②重点対策加速化事業

の2つに分けられるのですが、【脱炭素先行地域であること】が条件となっているのは①であるため、今回は①を紹介します。
前述の通り、脱炭素先行地域であることが前提として存在するうえで、

  • 再エネ設備導入および整備(太陽光・水力・バイオマスなど)
  • 基盤インフラ整備(蓄電池・充放電設備など)
  • 省CO₂等設備整備(ZEB・ZEH・EV自動車など)
  • 効果促進事業(CO₂排出削減のための設備導入と併せて、より効果的にするために必要な事業)
  • その他(環境省に相談して認められたもの)

が支援の対象です。中でも、再エネ設備導入および整備に関しては実施が必須条件となっています。基本的には交付金の交付率は3分の2ですが、事業によって交付率や上限が違うので、注意が必要です。詳細はこちらからご覧ください。

特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】は、同じく脱炭素先行地域であることが前提として存在するうえで、民間裨益ひえき型自営線マイクログリッド等事業に対して交付されます。
それぞれを簡単に説明すると、

裨益ひえき→助けとなること
自営線→一般送配電事業者以外(今回の場合は地方公共団体や民間事業者)が自ら敷設する送電線のこと
マイクログリッド→小規模な特定地域の中で再エネ設備や蓄電池を接続することで構築されるエネルギーネットワークのこと

です。つまり、民間裨益型自営線マイクログリッド事業とは、地方公共団体や事業者によって省エネ等設備導入や再エネ供給設備を導入することで、地域内で再エネを活用していくための事業といえるでしょう。再エネが必要なため、脱炭素先行地域づくり事業への支援同様、再エネ設備導入および整備は必須です。

双方に共通して、事業期間は5年程度であり、3年度目に中間評価が実施されます。

交付金の予算

地域脱炭素推進交付金の予算額は年々増加しています。国として、来年度の脱炭素先行地域100か所に向けて取り組みを強化していることが伺えるでしょう。

地域脱炭素推進交付金の予算推移
出典:脱炭素先行地域(第5回)選定結果について. 環境省を基に弊社作成

脱炭素先行地域の事例

2024年11月時点で、38都道府県、計82市町村が選定されている脱炭素先行地域。今回は第1回と第5回で選定された脱炭素先行地域の事例をご紹介します。

さいたま市「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル」

第1回で選定された事例からはさいたま市を取り上げます。さいたま市では、公共施設、2つの大学、浦和美園地区の商業施設やモデル街区などの大口電力需要家と連携し、脱炭素化を進めています。これらの施設に太陽光発電や蓄電池を設置し、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を活用して需給管理と効率化を図る取り組みを実施中です。
また、地域内外ではフロート太陽光発電やごみ発電、卒FIT電源など多様な再生可能エネルギーを活用。加えて、市内全体で再生可能エネルギーを活用したシェア型のマルチモビリティサービス(小型EV、EVスクーター、バッテリーステーションなど)の大規模拡大を目指すべく、取り組みを進めています。

陸前高田市「脱炭素と資源循環で実現する農林水産業振興」

第5回で選定された事例からは陸前高田市を取り上げます。陸前高田市では、脱炭素化と地域資源循環を進めるため、農業、太陽光発電、再生可能エネルギーを組み合わせた創造的な復興モデルを導入しています。農地回復が難しい津波被災跡地を有効活用する取り組みもあり、注目を集めている地域の1つです。

また、市有林における森林クレジットや広田湾等でのJブルークレジットの創出といった、民生部門電力以外の取り組みも進んでいます。

まとめ

脱炭素先行地域は、地域特性を活かした独自の脱炭素化に取り組む重要なモデルです。これらの取り組みを支えるための交付金や支援制度も充実しており、地域の脱炭素化を後押ししています。来年度の脱炭素先行地域100か所に向けて取り組みを強化している脱炭素先行地域。今後の動向もチェックしていきましょう。

エスプールブルードットグリーンの支援について

弊社は環境経営におけるパートナーとして、CDPやTCFDなど各枠組みに沿った情報開示や、GHG排出量の算定のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

< 出典 > 

第1回 脱炭素先行地域の概要. (2022, April). 環境省

第2回 脱炭素先行地域の概要. (2022, November). 環境省

第3回 脱炭素先行地域の概要. (2023, April). 環境省

第4回 脱炭素先行地域の概要. (2023, November). 環境省

第5回 脱炭素先行地域の概要. (2024, September). 環境省 

脱炭素先行地域募集要領(第5回). (2024, February). 環境省.

脱炭素先行地域(第5回)選定結果について. (2024, September). 環境省

脱炭素先行地域 .脱炭素地域づくり支援サイト 環境省

地域脱炭素推進交付金 .脱炭素地域づくり支援サイト 環境省

地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 交付対象事業となる事業(脱炭素先行地域づくり事業). 環境省

特定地域脱炭素移行加速化交付金 交付対象事業となる事業(民間裨益型自営線マイクログリッド等事業) .環境省

地域脱炭素推進交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金、特定地域脱炭素移行加速化交付金等). 環境省

SCROLL