OECMとは?企業が認定を得るメリットや事例をわかりやすく解説!

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OECMとは?企業が認定を得るメリットや事例をわかりやすく解説!

生物多様性に関する用語として、近年OECMという言葉を耳にする方が増えていると思います。OECMとは、生物多様性の保全を目的として管理されている地域のことです。企業においても、OECMに登録するメリットは複数存在します。今回のコラムではそんなOECMについて、他の概念との違いや実例を含めて詳しく解説。生物多様性に関する知識を深める上で重要な内容となりますので、ぜひ最後までご覧ください。

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OECMとは

OECM (Other Effective area based Conservation Measures)とは、自然保護地域ではない地域において、長期の生物多様性の保全に効果的な方法で管理されている土地を指します。

保護地域とOECMの違い
出典:『OECM』って何だろう?どういうことだろう?_EPOちゅうごく_(2023年10月)を基に弊社作成 

OECMの目的は自然保護であり、その種類は3つに分けられます。

1つ目は「自然保護を目的としているが、保護地域として国が認定していない地域」で、民間の自然保護団体が主導している保護地域などが挙げられます。

2つ目は里山など、「自然保護を第一の目的としてはいないが、管理の目的として自然保護に貢献している地域」。

3つ目は田んぼなど、「自然保護を目的としてはいないものの、管理している結果自然保護に繋がっている地域」です。またOECMが自然保護地域と大きく違う点として、土地を利用する主な目的を変更せずに自然保護に取り込むことが可能であるといった特徴があります。

OECMのパターン
出典:人と自然の共生地域OECM_日本自然保護協会_(2022年12月)を基に弊社作成 

OECMと自然共生サイトとの違い

OECMは、生物多様性の保全に効果的な管理がされている土地を指しています。それと近しいものとして自然共生サイトがあり、企業が所有している森や里山など、目的を問わず民間の団体や取組などによって生物多様性の保全に貢献する形で管理されている区域が自然共生サイトの認定対象となっています。

上記の2つは、ともに生物多様性の保護地域として環境省の認定対象であるといった点で共通。一方、OECMと自然共生サイトの主な違いとして、自然共生サイトはOECM以外に、保護地域に認定されている地域も対象としている点があります。つまり、自然共生サイトにおいて保護地域に該当しない地域が、OECMにあたるのです。

自然共生サイトにおいて保護地域に該当しない地域は、認証されてから追加でOECMにも登録されます。まず保護地域を含んだ民間の取組などによって生物多様性が保全されている地域が、自然共生サイトとして認定されます。さらにそこから、自然共生サイトの中で保護地域を含んでいない地域がOECMとして登録されるのです。

OECMと自然共生サイトの関係性
出典:OECM と自然共生サイトについて」_環境省_(2023年)を基に弊社作成 

OECMと30by30目標との関係

30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標とは、2030年までに、陸と海の30%以上の保全に取り組むという目標のこと。2022年にCOP15にて採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」にて、2030年グローバルターゲットの1つとして挙げられました。日本でも2023年3月に生物多様性に関する戦略である「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、ネイチャーポジティブ実現に向けた目標として30by30目標を重要視しています。この30by30目標を達成するために、OECMは欠かせない役割を担っています。30by30目標を達成するためには、現時点で存在する自然保護地域を拡充する以外にも、自然保護地域を除いた、生物多様性を保全している地域であるOECMを登録していくことで目標達成につなげることが重要です。

OECMの定義と認定基準

OECMの国際的な定義は、2018年に行われたCOP14にて決定されました。その定義を簡単に説明すると、保護地域以外の地域において、生態系の機能やサービスなどの価値を備えた上で生物多様性の保全に長期的に貢献できる方法で管理されている地域となっています。そこからOECMの基準として、①境界・名称に関する基準、②ガバナンス・管理に関する基準、③生物多様性の価値に関する基準、④管理による保全効果に関する基準の4つが、主な認定の基準となっています。

OECMの認定を得るメリット

企業におけるOECMの認定を得るメリットになり得るものとして、大きく分けて2つ挙げることができます。

OECMの認定を得るメリット

一つ目は、企業におけるPRに活用できるという点です。企業の所有している土地がOECMとして登録されるということは、生物多様性の保護に貢献しているということ。それをホームページ上などにおいてPRすることで、サステナビリティに積極的に取り組んでいる企業という印象を与えることができます。

二つ目は、経済的インセンティブに繋がる可能性が高いという点です。現在日本では30by30目標を達成するために、OECMに力を入れています。その一環として、環境省では優遇税制をはじめとした、OECMにおける経済的な優遇制度を検討。実際に2023年7月に、環境省にて第1回「OECM の設定・管理の推進に関する検討会」が開かれています。

国内のOECMに登録されている地域の事例

ここで、国内で企業が所有するOECMの事例を2つご紹介いたします。

トヨタ自動車 士別試験場

トヨタ自動車株式会社が所有している士別試験場では、樹林や草地、河川といった多様な環境を保全しており、カタクリなどの希少な動植物種や、良好な水質の指標となるサクラマスなどが確認されています。また生物多様性の保全への取り組みとして、①重要種の保全、②外来種の駆除、③地域連携イベントの3つの取り組みを実施しています。

横浜ゴム株式会社 茨城工場

横浜ゴム株式会社が所有している茨城工場では、工場内の緑地に常緑広葉樹、草地、水辺、里山林などが見られ、それらを保全しています。その結果、工場内にはサシバなどの猛禽類が見られ、採餌が確認されていることからこのエリアが繁殖行動に寄与していると想定されています。そこで管理計画の一つとして、サシバのための水場(ビオトープ)周辺の草刈りを行っており、頻度は冬期を除き月1回程度です。

まとめ

今回は、生物多様性の保全に効果的な管理がされている地域を指す言葉である、OECMに関して説明いたしました。

OECMに登録することで生物多様性の保全を行っていることを認知することができ、企業におけるメリットとしてPRへの活用や、今後経済的インセンティブに繋げることも可能であると予想されています。また生物多様性に関して、弊社でも支援させていただいている生物多様性フレームワークであるTNFDとも共通している部分が多くなっています。これから生物多様性に関する知識をより深めたり活用したりしていく際に、今回のコラムを少しでもお役に立てていただければ幸いです。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

人と自然の共生地域OECM_日本自然保護協会_(2022年12月)(2024年11月参照) 

『OECM』って何だろう?どういうことだろう?_EPOちゅうごく_(2023年10月)(2024年11月参照) 

30by30 よくある質問 QA_環境省(2024年11月参照) 

身近な自然も対象に『自然共生サイト』_環境省(2024年11月参照) 

30by30目標とOECMに係る国内の取組について_環境省(2024年11月参照) 

30by30とは_環境省(2024年11月参照) 

民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を認定する基準の考え方について_環境省_(2021年)(2024年11月参照) 

企業×地域戦略としてのOECM の可能性調査~自然共生サイトの活用とその課題~_日本経済研究所_(2023年5月)(2024年11月参照) 

令和5年度 第1回「OECMの設定・管理の推進に関する検討会」・第1回「30by30 に係る経済的インセンティブ等検討会」の合同開催について_環境省_(2023年7月)(2024年11月参照) 

「OECMにも貢献する環境省の取組状況について」_環境省_(2022年3月)(2024年11月参照) 

令和5年度 自然共生サイト認定について_環境省_(2024年3月)(2024年11月参照) 

R6前期【No.03】 サイト名:トヨタ自動車 士別試験場_トヨタ自動車株式会社_(2024年)(2024年11月参照) 

R5前期【No.05】 サイト名: 横浜ゴム株式会社 茨城工場_横浜ゴム株式会社_(2023年12月)(2024年11月参照) 

令和2年度第 1 回民間取組等と連携した自然環境保全(OECM)の在り方に関する検討会 (2024年11月参照) 

議事録_環境省_(2020年12月)(2024年11月参照) 

OECM と自然共生サイトについて」_環境省_(2023年)(2024年11月参照) 

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