年々発行数が増加しているグローバルな認証制度「ISCC認証」を知る

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年々発行数が増加しているグローバルな認証制度「ISCC認証」を知る

ISCC認証とは

ISCC認証とは、International Sustainability and Carbon Certificationの略です。国際持続可能炭素認証とも呼ばれ、生物由来の有機資源である「バイオマスに関するグローバルな認証制度」のことを指します。ISCC認証は独立した第三者機関によって、①原材料生産におけるサステナビリティ、②サプライチェーンを通じての持続可能な原材料のトレーサビリティ(追跡可能性)、③GHG(温室効果ガス)排出削減量を保証できるのが特徴です。なお認証を取得するためには、「炭素が豊富なエリアの保護」や「環境保護に配慮した栽培、土地、水、大気の保護」など、下記6つの厳格な要件を満たしている必要があります。第三者機関によりこれらの要件を満たしていると審査された場合、ISCC認証を取得することが可能です。また、認証取得後はISCC認証マークを表示することが可能に。一般消費者はそのマークを目印にサステナブルな商品を選べるようになり、機関投資家は投資先を選定する際、ISCC認証を取得している企業なのか参考にできます。

■ISCC認証によって保証される内容

  • 原材料生産におけるサステナビリティ
  • サプライチェーンを通じての持続可能な原材料のトレーサビリティ
  • GHG排出削減量の確認

■認証を取得するための6つの要件

  • 炭素が豊富なエリアの保護(プランテーションで栽培されるバイオマスにのみ適応)
  • 環境保護に配慮した栽培、土地、水、大気の保護
  • 安全な作業環境
  • 人権・労働者の権利・配慮されたコミュニティーとの付き合い
  • 土地の所有権、法令国際条約の遵守
  • 優れた管理慣行

なおISCCは2006年に250を超える世界中の関係者を集めて、バイオ燃料業界の認証ニーズに関する意見交換を行った、マルチステークホルダー対話から活動が始まりました。初期構想段階を経て、2008年から2010年にかけてパイロットプロジェクトを実施。2010年には最初のISCC証明書が発行され、ベルリンにISCC協会が設立されました。同年に162件の証明書が発行され、それ以降毎年発行数は増加しています。

ISCCの歴史
出典:ISCC History. ISCC.を基に弊社作成

ISCC認証の種類

毎年発行数が増加しているISCC認証ですが、主要なISCC認証としてISCC EU、ISCC PLUS、そしてISCC CORSIAの3種類があります。今回はこれらのISCC認証について詳しく見ていきましょう。

ISCC認証種類
出典:ISCC System Documents. ISCC. / ISCC認証(国際持続可能性カーボン認証)~規格概要と化学業界動向について~.TÜV Rheinland.を基に弊社作成

ISCC EU

ISCC EUは、REDⅡ (*1) で指定されている法的サステナビリティ要件に基づいて運用されており、EUのバイオ燃料市場に適応範囲が限定されている認証システムです。持続可能な原材料として、農業および森林バイオマスといった生物由来の農産物や残渣を定義しています。加えて、サプライチェーン全体での持続可能な原材料の使用状況やGHG排出量の削減率報告義務があるなど、厳格な要件が要求される権威ある認証です。

(*1) REDⅡとは、2008年1月23日に気候・エネルギー政策パッケージの一つとして欧州委員会によって提案された、 RED(再生可能エネルギー指令)を2018年に改訂した指令のこと。2030年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも32%とするとされている。

ISCC PLUS

一方ISCC PLUSは、EU域外を含む全世界市場向けの食品、飼料、ケミカル、化成品が対象となっており、REDⅡで規制されていないすべての市場やセクター、さまざまな産業用途向けの認証システムのことです。ISCC EUで定義されている原材料に加え、リサイクル原料や製品も原材料として定義しています。REDⅡの指令が適応されていないため自由度が高く、サプライチェーン全体での持続可能な原材料の使用状況やGHG排出量の報告に関しては、任意で対応方針を決めることができます。

なおISCC PLUSは日本市場での認証数が他の認証と比較し最も多く、2024年9月27日時点では、日本市場における有効なISCC認証のうち352件がISCC PLUSによる認証になります。

ISCC CORSIA

そもそもCORSIA(コルシア)とはいったい何なのでしょうか。

CORSIAとは、ICAO(イカオ)と呼ばれる国際民間航空機関が、「グローバル削減目標」を達成するために実施している経済的手法のことです。ICAOの目標を達成するためには経済的手法を含め4つの対策が実施されています。その対策のうちの一つが持続可能な航空燃料と呼ばれる「SAF(サフ)の活用」となります。

グローバル削減目標と対策
出典:CORSIA(国際⺠間航空のためのカーボ ン・オフセットおよび削減スキーム)について. 公益財団法人地球環境戦略研究機関. (2019). を基に弊社作成

ICAO加盟国が国際航空においてSAFによる削減効果を主張するには、CORSIA適格燃料(CEF)の認証を受けたSAFを活用しなければいけません。そこでSAFがCORSIA適格燃料であると認証を得るために、持続可能性認証スキーム(SCS)の1つである、ISCC CORSIAによる認証が必要となってくるのです。

以上のことからISCC CORSIAは、CORSIAのオフセット要件を満たすSAFをCORSIA適格燃料であると証明するための認証システムだといえます。またISCC CORSIAによって、CORSIA適格燃料が設定している10%以上のGHG削減効果をはじめ、持続可能性に関するさまざまな基準に沿っていると証明することも可能です。ISCC CORSIAは、ICAOの目標を達成するために実施する重要な対策の一つである「SAF(サフ)の活用」の際に必要な認証システムだといえるでしょう。

CORSIAについてより詳しく知りたい方はこちらのコラムもご覧くださいませ。

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国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム「CORSIA」とは?設立の背景や国内での取り組みなど、わかりやすく解説!

ISCC認証取得のメリット

ISCC認証によって保証される内容や種類を見てきました。ここでは改めて、ISCC認証を取得するメリットについて整理していきたいと思います。

商品のサステナブル証明によるブランド価値向上

ISCC認証を取得している商品は、厳格な国際的第三者検証をクリアしていることになります。そのためISCC認証を取得している場合、企業は自社製品がサステナブルな資源や原材料から作られているものだと証明することが可能です。また一般消費者は、ISCC認証を取得している商品にのみ表示が許されるISCC認証マークを見て、サステナブルな商品を選ぶことができるようになります。競争力が上がることで市場価値が高まれば、ブランド価値向上にもつながるといえるでしょう。

環境経営のPR

ISCC PLUSに関しては任意ですが、ISCC EUやISCC CORSIAの場合、認証を取得するためにはそれぞれが設定するGHG削減率の基準を満たしていなければなりません。また、第三者機関によって収集されたデータの正確性が担保できるため、下記のように認証製品に対する主張が可能です。

■主張内容の一例

「認証された素材を使用することで、新たに生産されるプラスチックの量を減らすことに貢献している」

「再生可能原料により新たに生産されるプラスチックを代替することに貢献する」

「ISCC認証材を~トン購入した」

このようにGHG排出量削減への取り組みや、第三者機関によって収集された正確なデータに基づく製品に対する主張は、環境経営の周知により説得力のあるPRになるといえるでしょう。また、一般消費者だけでなく、取引先、株主、機関投資家といったステークホルダーへの企業イメージや評価の向上も期待できます。

ISCC認証の取得企業

ISCC認証を取得することによって、さまざまなメリットを享受できることがわかりました。現在ISCC認証は、130ヵ国以上で適用されている主要な認証枠組みとなっており、9,000件以上認証を受けているという状況です。近年、日本企業もISCC認証を取得している企業が増加してきており、2024年9月27日時点で、化学メーカーを中心に403の日本企業の事業所がISCC認証を取得しています。なおISCC PLUSを取得している事業所が352カ所と最も多く、次いでEU ISCCが40カ所、ISCC CORSIAが11カ所という認証数になっています。世界中で取得されているISCC認証ですが、取得方法や認証機関には、どのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

日本市場における現在有効なISCC認証数
出典:All ISCC Certificates. ISCC. (参照2024.09.27)を基に弊社作成

ISCC認証の取得方法

ISCC認証を取得するためには、まずISCC認証機関を選定する必要があります。認証機関選定後は、依頼企業とISCC認証機関の間で契約を締結します。なお認証機関の選定から証明書公開まではおおむね下記プロセスを踏んでいくことになります。

  1. ISCC認定機関の選定
  2. ISCCのHPよりシステムユーザー登録
  3. 監査実施
  4. 監査書類の提出
  5. 内部レビュー
  6. 証明書公開

なお認定書は、監査に合格した場合、監査日(③の工程)より60日以内に発行されます。加えて、認証機関との契約までにかかる時間や、各企業の監査準備にかかる時間が追加される見込みです。証明書はISCCのHPに公開されます。

出典:ISCC PLUS認証とは. テュフズードジャパン. を基に弊社作成

ISCC認証機関

ISCC認証の取得をするためには、ISCC認証機関と契約を締結し、認証機関によって認証書が発行される必要があることがわかりました。なおISCC認証は、下記のような認証機関より発行されています。

■ISCC認証機関 ※一部ご紹介

審査の実績や特徴が認証機関によって違うため、自社の業界や状況に合った認証機関を選定することが大切です。

まとめ

今回のコラムではISCC認証の概要や認証の種類、取得することによるメリットを中心に取り上げさせていただきました。世界中で認証数が増加しているISCC認証。企業活動を継続させていくためにも、第三者機関による認証を積極的に活用し、ブランド価値向上や環境経営のPRを行っていくことが大切です。今後の動向にも注目していきましょう。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

【出典】

ISCCの概要と日本市場に関する最新情報.(2022, October). ISCC. (参照2024.10.24)

ISCC History. ISCC. (参照2024.10.24)

ISCC PLUS. (2021) ISCC. (参照2024.10.24)

All ISCC Certificates. ISCC. (参照2024.09.27)

ISCC System Documents. ISCC. (参照2024.10.24)

ISCC Works Towards a Sustainable World. ISCC. (参照2024.10.24)

マスバランス方式に関する国内外の状況等. (2023, June). 環境省. (参照2024.10.24)

CORSIA 適格燃料登録・認証取得ガイド. (2024, March). 国土交通省. (参照2024.10.24)

RED〈Renewable Energy Directive〉再生可能エネルギー指令. 一般財団法人 環境優良車普及機構. (参照2024.10.24)

CORSIA(国際⺠間航空のためのカーボ ン・オフセットおよび削減スキーム)について. (2019). 公益財団法人地球環境戦略研究機関. (参照2024.10.24)

愛媛県四国中央市の丸住製紙大江工場が、パルプ工場として世界初のISCC-CORSIA認証を取得しました. (2024, August). 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. (参照2024.10.24)

ISCC認証(国際持続可能性カーボン認証)~規格概要と化学業界動向について~.TÜV Rheinland. (参照2024.10.24)

ISCC PLUS/EU/CORSIA認証(国際持続可能性カーボン認証). ビューローベリタスジャパン株式会社. (参照2024.10.24)

ISCC PLUS認証とは. テュフズードジャパン. (参照2024.10.24)

ISCC認証. SGSジャパン株式会社.  (参照2024.10.24)

ISCC PLUS/ISCC EU/ISCC CORSIA 認証【国際持続可能性カーボン認証】. インターテック. (参照2024.10.24)

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