不動産業界のESG評価「GRESB」とは?種類や評価項目をわかりやすく解説!

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近年、サステナビリティへの関心が高まりを見せる中、企業や投資家にとってESG(環境・社会・ガバナンス)評価はますます重要なテーマとなっています。 

2006年に当時の国連事務総長だったコフィ・アナン氏によって「責任投資原則(PRI)」が提唱されて以降、不動産への直接的・間接的投資についてもこの原則の対象として認識されています。 

こうした背景の中で、不動産およびインフラセクターのサステナビリティ・パフォーマンスを評価するための主要なベンチマークツールとして注目を集めているのが「GRESB (グレスビー/グレスブ) 」です。 

2009年に設立されたGRESBは、不動産投資家や運用会社に対して、サステナビリティ・パフォーマンスの測定や報告の枠組みを提供し、透明性と信頼性の高いデータを通じて持続可能な投資の推進に貢献しています。 

不動産業界におけるESG評価の重要性が増す中 、GRESBがどのようにして企業やファンドのサステナビリティを評価し、どのような基準でそれを実現しているのでしょうか。今回は、GRESBの概要や評価項目、他の評価制度との違いについて、対象企業の多いGRESBリアルエステイトを中心に解説します。

不動産業界のESG評価、GRESBとは

GRESBとは、不動産/インフラ(実物資産)セクターの企業やファンドの、サステナビリティ・パフォーマンスを評価するベンチマークツールおよびその運営機関です。 

投資分野におけるベンチマークとは、投資判断や運用実績を評価・測定する際の指標のことで、ことESG投資においては投資対象の環境配慮やガバナンス整備などが評価されます。 

2009年に欧州の主要な機関投資家グループによって、不動産投資家や運用会社に対してサステナビリティ・パフォーマンスの測定や報告の枠組みを提供することを目的に創設されて以来、GRESBは不動産およびインフラ投資の主要なESGベンチマークツールとなっています。 

現在、GRESBを活用して投資先の選定や対話を行っている投資家メンバーは、世界中で約150機関にのぼり、その資産運用残高(AUM)は50兆米ドル(1米ドル148円換算で約7,400兆円)に達します。 

GRESBは当初Global Real Estate Sustainability Benchmarkの略称として用いられていましたが、インフラを評価対象に加えたことにより、現在はGRESBが正式名称となっています。 

現在は実物資産のESG 配慮を評価するための基準であるGRESB スタンダードを策定する「GRESB ファンデーション」と、GRESBスタンダードに基づいて評価・検証・スコア付けを行う「GRESB B.V.」に分かれています。双方の独立性を確保することで、透明性の高い組織運営が可能になっています。

GRESBの種類と評価の仕組み 

GRESB評価 (Assessment)には大きく分けて「GRESBリアルエステイト評価」と「GRESBインフラストラクチャー評価」の2つがあります。

GRESBの種類と評価の仕組み
出典: GRESB Real Estate Assessment. GRESB. を基に弊社作成

評価を受けるにあたって、回答企業はGRESBのポータルサイト上に登録し、どの評価(リアルエステイト/インフラストラクチャー)を選択するのか、どのコンポーネント(後述)について報告をするのかを決定します。コンポーネントごとの質問書に回答し、GRESBによる採点後、結果を受領することが可能です。最終評価結果は10月1日に回答企業とGRESBに参画する投資家メンバーに公表されます。 

GRESBリアルエステイト

GRESBリアルエステイトは不動産会社を対象にした評価であり、以下の3つの「コンポーネント」という評価軸から成り立っています。

GRESBリアルエステイトの構造
出典: GRESB Real Estate Assessment. GRESB. を基に弊社作成

マネジメント・コンポーネントを含めた2つ以上を回答することで、回答企業は最終的に「Standing Investment」と「Development」 のいずれかあるいは両方のベンチマーク・レポートを得ることができます。 

GRESBリアルエステイトでは2024年時点で、全世界で2,200を上回る企業が評価対象となり、その資産額は7兆ドルを超えています。 

GRESBインフラストラクチャー

 GRESBインフラストラクチャーはインフラファンドを対象にした評価で、保有資産のマネジメントと環境パフォーマンスに関するアセスメント (Asset Assessment)によるパフォーマンス・スコアと、ファンドのマネジメントに関するアセスメント (Fund Assessment)によるマネジメント・スコアを元に「GRESBインフラストラクチャー・ファンドスコア」として最終報告されます。 

2024年には建設段階のインフラも対象にした「GRESB Infrastructure Asset Assessment」の導入により、投資家などに対して資産のライフサイクルを含めたより包括的なベンチマークの提供が可能になっています。 

GRESBリアルエステイトの評価項目

GRESBリアルエステイトの評価項目は多岐にわたり、ESG方針や廃棄物管理について回答する必要があります。加えてほぼすべての設問で、回答を裏付ける根拠資料を提出する必要があり、それがGRESBの要求する水準に満たない場合は減点される可能性があります。 

GRESBリアルエステイト評価では前述のコンポーネント2つの配点を合わせた100点満点で採点される「GRESB スコア」と、スコアのグローバル順位によって格付けされる「GRESB レーティング」が与えられます。「GRESB レーティング」は、総合スコアの上位20%に与えられる「5スター」から、下位20%に与えられる「1スター」までの5段階の相対評価になっています。 

また、評価対象になる2つのコンポーネントでそれぞれ50%を上回る得点率を達成した場合、「グリーンスター」が与えられます。これはレーティングと違い絶対評価によるものです。  

GRESBの評価を受けた回答企業は、自身のレーティングを表したGRESBロゴをプレスリリースなどの対外的なコミュニケーションに利用することができます。 

GRESBリアルエステイトの参加企業

発足以来、GRESBの評価参加者は年々増加しており、グローバルで見ると2013年に538社であったのが、2024年は2,223社と参加企業は4倍以上になりました。日本でも2013年時点で27社でしたが、2024年は143社と5倍以上となっています。 

日本の参加者数は世界的にも多く、米国、英国についで3番目に位置します。

CASBEEやLEEDとの違

不動産に関連したESG評価制度はいくつかありますが、それらとGRESBはどのように違うのでしょうか。この章では広く用いられているCASBEEとLEEDとの違いについて解説します。 

CASBEE(建物環境性能評価システム)は、建物の環境性能を評価し、持続可能な建築を推進するための日本の評価システムです。建物のエネルギー効率、環境負荷、快適性などを総合的に評価する環境認証制度となります。 

LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)は、環境に配慮した建物設計と運営のための国際的な認証制度です。持続可能な建築の推進を目指し、エネルギー効率、水の使用、材料の選定、インテリア環境などの基準を設けています。 

前述のCASBEE、LEEDとGRESBとの違いは主に2点あります。まずは評価対象の違いが挙げられます。CASBEEとLEEDが個別の建物を対象として環境性能を評価しているのに対し、GRESBはファンドや企業を対象として不動産投資の持続可能性を評価しています。 

次に評価基準が挙げられます。CASBEEとLEEDでは建物の環境負荷やエネルギー効率などを総合的に評価しますが、GRESBではファンド等のESG方針やテナントのエンゲージメント活動など、企業のガバナンスについても評価されます。 

以上から、不動産という共通項はあるものの、GRESBは企業を対象としたベンチマークであるため、実態としては企業の気候変動対応などの取り組みを評価するCDPに近いものといえます。 

まとめ

GRESBは、不動産およびインフラセクターの企業やファンドのサステナビリティ・パフォーマンスを評価する主要なベンチマークツールです。他の評価制度であるCASBEEやLEEDとは異なり、ファンドや企業を対象とした総合的な評価を行う点が特徴で、いわば不動産版のCDPともいえるものです。 

保有物件などのESGパフォーマンスや企業のガバナンス、ステークホルダー・エンゲージメントの実績など評価項目は多岐にわたり、回答企業の手間やコストは小さくありません。しかしながらESG投資の対象としてのブランドイメージ向上や、自社の取り組みの見える化などのメリットも多く、GRESBの評価を通じて、企業やファンドは持続可能な未来に向けた重要な一歩を踏み出すことができます。 

GRESBは国際的なESGベンチマークの一つとして、企業が長期的な価値創造と社会的責任を果たすための道標となります。皆様もぜひ、GRESBを活用し、持続可能な社会の実現に貢献していきましょう。

エスプールブルードットグリーンの支援について

弊社は環境経営におけるパートナーとして、CDPやTCFDなど各枠組みに沿った情報開示や、GHG排出量の算定のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

GRESB2024年評価結果―日本からの参加状況―. CSRデザイン環境投資顧問株式会社. (参照2024.11.18)

GRESB Real Estate Assessment. GRESB. (参照2024.11.18)

2024 Real Estate Scoring Document. GRESB. (参照2024.11.18)

2024 Real Estate Assessment Results. GRESB. (参照2024.11.18)

2024 Infrastructure Fund Scoring Document. GRESB. (参照2024.11.18)

2024 HOW TO READ YOUR BENCHMARK REPORT. GRESB. (参照2024.11.18)

Guidance for GRESB Participants. GRESB. (参照2024.11.18)

CASBEEの概要. 一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター. (参照2024.11.18)

LEED とは. Green Building Japan. (参照2024.11.18)

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