グリーンウォッシュとは?企業が取るべき対策と最新動向をcheck✓

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グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、実際より環境に優しく、サステナブルに配慮しているように広告・PRを行うことです。英シンクタンクのPlanet Trackerは、「The Greenwashing Hydra」のレポート内で、グリーンウォッシュを下記の図のように大きく6つのタイプに分類。この分類によるとグリーンウォッシュには、表示方法などすぐに気づけるものがある一方で、グリーン・シフティングなど消費者や企業にとっても、分かりにくいものまで含まれていることが分かります。「グリーンウォッシュ」という言葉は日本でも使われていますが、海外では議論が進み、より広義な意味をもって使われているのが現状。企業担当者は「果たして自社のPRや開示がグリーンウォッシュと指摘されないか」改めて見直す必要があるでしょう。

グリーンウォッシュの分類

The Greenwashing Hydra」を基に弊社にて作成

またICPEN (The International Consumer Protection Enforcement Network)が国際的な調査の一環として行ったウェブサイト分析によると、衣料品や化粧品、食品などさまざまな分野の商品やサービスを宣伝する約500のウェブサイトのうち、40%にあたるサイトが誤解を招くような表現を使っているとのこと。グリーンウォッシュに関する事態の深刻性がうかがえます。

グリーンウォッシュの問題点

では、具体的にグリーンウォッシュの何が問題となっているのでしょうか。国際連合はグリーンウォッシュの問題点について、「排出量を削減し、気候危機に対処するための信頼できる取り組みを損なうものである。欺瞞的なマーケティングと持続可能性の虚偽の主張を通じて、グリーンウォッシングは消費者、投資家、一般大衆を欺き、地球規模の変化をもたらし、持続可能な地球を確保するために必要な信頼、野心、行動を妨げている。」と言及しています。

これは日本企業も例外ではなく、具体的には大きく下記の3つのような問題点が考えられます。

【1】企業のイメージダウン

グリーンウォッシュ的な表示や開示が意図的であったかどうかに関わらず、企業が行う事業や製品にグリーンウォッシュのイメージがついてしまうと、取引先や顧客をはじめとした社会的な信用を失うことにもつながってしまいます。そして、一度ついてしまったイメージを払拭することは難しく、イメージの回復には多大なコストを払わなければなりません。

【2】消費者・投資家への欺瞞

環境に優しい特徴のみを強調して環境に悪い面を明言しないグリーン・ライティングや、「地球に優しい」「エコ」といった実質の伴わない曖昧な「サステナブル」を訴求するグリーン・ラベリングなどによって生まれる購買行動は、真摯に環境表示を行っている企業やサステナブルを志向する消費者、その企業に投資している投資家からの搾取と捉えられる可能性もあります。実際に、海外ではグリーンウォッシュが原因で訴訟が起きているケースも増えており、十分に注意が必要であると言えるでしょう。

【3】SDGsのゴール達成の障害に

現在、日本は2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、各セクターでさまざまな取り組みが実施されています。これは、SDGsのゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とゴール13「気候変動に具体的な対策を」の2つに直接的に関わる重要な政策となっており、グリーン・クラウディングやグリーン・リンシングなど、非協力的な行為によってゴールの達成が遠のいてしまうことに。国際的な取り組みにおいて後れを取ってしまうということは、つまりは日本の評価が落ち、競争力の低下を招くことにもつながりかねません。

グリーンウォッシュ批判を回避するために

以上のような問題を孕むグリーンウォッシュに加担しないために、企業ができる取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。有効な取り組みとしては、「規格に則った主張や表示をすること」が挙げられます。

国際標準化機構(ISO)は、環境表示*に関する国際規格として「環境ラベル及び宣言(Environmental labels and declarations)」シリーズを発行しており、環境ラベル及び宣言を下記画像のような3のタイプに分類しています。

環境ラベル3タイプ

環境ラベルとは」を基に弊社にて作成

これらのラベル及び宣言は、事業者単体で行うことができるタイプⅡ「自己宣言」と、第三者による認証・検証を必要とするタイプⅠ「第三者検証」・タイプⅢ「環境情報表示」と大きく2つに分けられます。

*:説明文やシンボルマーク、図表などを通じた製品又はサービスの環境主張。 「環境ラベル」及び「宣言」が含まれる。

【1】自己宣言による適切な環境主張(タイプⅡ

自己宣言による環境主張の主張内容はすべて事業者等の判断に委ねられているため、主張する環境情報の信頼性、透明性の確保がとても重要となる一方で、タイプⅡに準拠しない環境表示も数多く見受けられるのが現状です。環境表示は消費者の購買行動の直接的な判断材料となるためその意義と責任は大きく、また今後世界への輸出を増やしていくためにもその基準を国際的な基準に統一する必要があります。そのため、事業者は国際規格であるタイプⅡ(ISO/JIS Q 14021)に準拠した表示を行うことが望まれているのです。

では実際に、タイプⅡではどのようなことが求められているのでしょうか。

タイプⅡの要求事項

環境表示ガイドライン」を基に弊社にて作成

①について、具体的に「環境に優しい」「地球に優しい」「グリーン」など、環境への配慮を大まかにほのめかす主張はしてはならないとされています。また、②で求められる説明文については、下図のようにより細かな規定が設けられています。

あいまいな表現の定義

環境表示ガイドライン」を基に弊社にて作成

現状として、仮にこれらの環境表示要件に違反したとしても日本ではそれを罰する規定は存在しません。しかし自社で環境表示を行う際には、グリーンウォッシュと疑われない、効果的なマーケティングを行うために、上記の規定に沿って適切な表示・開示を心がけることをおすすめいたします。

【2】第三者による検証・認証(タイプⅠ、Ⅲ)

タイプⅠ、Ⅲについては、第三者機関がそれぞれの国際規格に基づく認証プログラムにより運営しており、これらの環境表示を行うために事業者はそれぞれの基準をクリアする必要があります。

A:第三者認証による環境ラベル

タイプⅠに関して、事業者は第三者実施機関が策定した基準に基づいて申請を行い、審査を受ける必要があります。実際に使用されている環境ラベルを例にその基準について見てみましょう。

<エコマーク>

エコマーク

出典:「エコマークとは」

公益財団法人日本環境協会によって、ライフサイクル全体を考慮して環境保全に資すると認定されたものに付与される環境ラベル。ISOの規格(ISO14024)に則った日本唯一の第三者認証によるタイプⅠ環境ラベル制度で、物品やサービスなど幅広い商品を対象とし、商品の類型ごとに認定基準が設定されています。

<The Blue Angel>

The Blue Angel

出典:「ブルーエンジェルとは

ドイツ連邦環境庁(UBA)等が運営する、「他の製品と同等の機能を果たすこと」「あらゆる側面の環境保護が考慮されていること」「環境にやさしい点で特徴づけられていること」「その使用や安全性に問題がないこと」を満たす製品・サービスに付与される環境ラベル。このラベルは世界で初めて導入されたエコラベル制度であり、エコマーク事務局を通して相互認証を行うことが可能となっています。

B:製品の環境負荷の定量的データの表示

タイプⅢでは、事業者は製品のライフサイクルアセスメント(LCA)データ、ライフサイクルインベントリ分析(LCI)データ等をまとめ、専門家による検証を受ける必要があります。以下、タイプⅠ同様に環境ラベルの実例を見てみましょう。

<SuMPO EPD>

SuMPO EPD

出典:「SuMPO EPD

一般社団法人サステナブル経営推進機構(通称:SuMPO)が国際規格ISO14025に準拠し運営・管理を行うEPD(Environmental Product Declaration)プログラム。2020年に申請受付が終了したエコリーフ環境ラベルを引き継ぐ形で生まれました。SuMPO EPDでは、製品のライフサイクル全体を対象とした評価だけでなく、製品ライフサイクルの上流のみを切り出した評価・情報開示も可能です。登録された商品・サービスはSuMPO EPDウェブサイト上に開示され、あらゆる製品・サービスにおける透明性の高い環境情報開示に活用できます。

グリーンウォッシュ規制の最新動向

グリーンウォッシュと疑われないために適切な開示・表示が求められる環境主張。企業がこれらの取り組みを行う必要性は年々高まってきています。

直近では2024年2月20日、グリーンウォッシングを禁止する指令案が欧州理事会(EU)により正式に採択されました。指令案では、耐久性や修理可能性、環境・社会への影響などの製品の循環を、誤解を与えてはならない製品の要素として定義。以下のような内容が「製品の循環に関するマーケティングの禁止事項」として明記されました。

EUが採択した、製品の循環に関するマーケティングの禁止事項

EU、グリーンウォッシング禁止法を採択、根拠ない「環境に優しい」など表示禁止」を基に弊社にて作成

また、目標や達成期限の測定可能性が担保された現実的な実施計画を持ち、独立した第三者機関による定期的な検証を受けている、明確かつ客観的で検証可能なコミットメントがない環境訴求については、それらを「誤解を招くマーケティング方法」として禁止しています。

具体的に、以下が原則禁止とされるマーケティング方法の一覧になります。

EUが定める誤解を招くマーケティング方法

EU、グリーンウォッシング禁止法を採択、根拠ない「環境に優しい」など表示禁止」を基に弊社にて作成

欧州議会は、企業が環境主張を行う場合には事前に認定された検証者から承認を得る必要があることに同意しており、罰則規定についても現在策定中のグリーンクレーム指令案の中で「調達からの除外、収益の没収、年間売上高の4%の罰金」と規定しています。

海外の規制

またEUに限らず海外では、すでにグリーンウォッシュに該当する表示や開示を禁止する国も。フランスやオーストラリアがその例として挙げられます。

フランスでは、2022年6月にフランス消費者法典が改正され、グリーンウォッシュに対する罰則として2年の懲役および30万ユーロ(約5000万円)の罰金を規定。そしてオーストラリアでは、2023年12月にACCC(Australian Competition & Consumer Commission)が発行した企業向けグリーンウォッシュ防止ガイダンス「Making environmental claims」において、虚偽や誤解を招くようなグリーンウォッシングに対して最大5000万ドル(約76億円)、個人に対しては最大250万ドル(約3.8億円)の罰金を科すことが定められています。

両国とも、その罰則規定からグリーンウォッシュに対して厳しい規制を敷いていることがわかり、EUの動向も鑑みると、今まさにグリーンウォッシュへの対応が世界的に進展していると言えるのではないでしょうか。

まとめ

世界的に対策が取られつつあるグリーンウォッシュ。冒頭でお伝えした通りグリーンウォッシュという言葉は、海外では日本よりも広義な意味で捉えられており、中には企業担当者ですら見逃してしまうようなものまで含まれています。自社製品やサービスの表示・開示がグリーンウォッシュと疑われないよう、ぜひ本コラムをきっかけに自社の環境主張を見直し、根拠や信頼性、透明性の伴った環境主張や開示をしていくことを強くおすすめいたします。

エスプールブルードットグリーンの支援について

弊社は環境経営におけるパートナーとして、CDPやTCFDなど各枠組みに沿った情報開示や、GHG排出量の算定のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

出典:

Global Sweep Finds 40% of Firms’ Green Claims Could Be Misleading. (2021, January 28). GOV.UK.

Greenwashing – the Deceptive Tactics behind Environmental Claims. United Nations.

「安易な脱炭素宣言」は、社会から批判を浴びる カーボンクレジット活用上の留意点【前編】. (2023, October 19). 東洋経済ONLINE.

カーボンニュートラルとは. 脱炭素ポータル.

SDGsの目標:7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに. Edu Town SDGs

SDGsの目標:13 気候変動に具体的な対策を. Edu Town SDGs

Bluesign® SYSTEM Version 3.0. (2020, March). Bluesign®. 環境省

 JIS Q 14025の制定~ISO環境ラベル(タイプIII)のJIS化について~(お知らせ). (2008, June 18). 環境省

タイプⅢ環境ラベルについて. 一般財団法人 日本ガス機器検査協会.

France: Update on “Greenwashing” Regulation. (2022, June 5). World Law Group.

Making  Environmental Claims  A Guide for Business. (2023, December). ACCC.

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