簡単解説!COP28決定事項まとめ

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COP28とは

2023年11月30日~12月13日まで、UAE・ドバイにて開催された気候変動の問題を話し合う国際会議のことです。日本語では「第28回国連気候変動枠組条約締約国会議」と言い、今回開催されたCOP28には198の国や機関が参加しました。

なおCOPとは「Conference of the Parties(締結国会議)」の略で、気候変動に関する国際条約の他に「生物多様性に関する国際条約」や「干ばつによる砂漠化を防ぐための国際条約」などもあります。今回のコラムではこの気候変動に関する最大の国際会議であるCOP28についてご紹介します。

COPの背景と目的

COPの背景と目的

COPの始まりは環境問題の深刻化に関して、世界的規模での早急な対策が求められ開催された地球サミットでした。サミットでは、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目標とした国連気候変動枠組条約が採択。

採択された翌年の1995年から、地球温暖化対策に世界全体で取り組むことを目的とした、COPが定期的に開かれるようになりました。COPでは、首相級・閣僚級の会合や個別のテーマについての議論、行動計画の策定、国際的な合意などが行われ、多国間での意見を一致させることにおいて、重要な役割を果たしています。

たとえば1997年に開催のCOP3では、先進国に対し2012年までに排出量削減についての目標設定を求める京都議定書が採択されました。

さらに2015年開催のCOP21では、2020年以降の世界共通の目標として、産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より低い1.5℃に抑える努力を求めるパリ協定が採択。京都議定書に代わり、温室効果ガス排出削減のための新たな国際的枠組みとなりました。パリ協定の長期目標を受けて各締約国は、2030年までに自国の温室効果ガス排出量を削減する目標を設定、それに基づいた具体的な行動に移すことが求められています。 

COP28の重要な論点

では今回開催されたCOP28では、どのような内容の話し合いが想定されていたのでしょうか?具体的には、下記のような重要な論点が挙げられていました。

  • グローバル・ストックテイク(GST)の実施
  • NDCの強化
  • 損失と損害(Loss and Damage)
  • 緩和(Mitigation)
  • 適応(Adaptation)

特に注目されていたのは、COP28で初の実施となったグローバル・ストックテイク。この施策は2021年11月から「情報収集と準備→技術的評価→成果物の検討」の3ステップに沿って少しずつ進められており、COP28が初の「成果物の検討」の実施の場となりました。 

COP28の成果と合意

では実際、これらの論点について話し合われた結果どのような合意がなされたのでしょうか?一つずつ見ていきましょう。

COP28 全体集合写真
出典:December 1 – World Climate Action Summit | DECEMBER 1: World… | Flickr

グローバル・ストックテイク(GST)の実施

グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の長期目標達成に向けた世界全体の進捗状況を5年おきに確認し、各国がそれぞれの取り組みを強化するための情報提供をする仕組みのこと。COP28は初のグローバル・ストックテイクが実施される場となりました。具体的に成果文書には、下記のような内容が記載されています。(一部抜粋)

  • 1.5℃目標に向けて迅速な行動と支援が必要である
  • 2025年までにGHG排出量をピークアウトさせる
    (そのためには2030年までに43%、2035年までに60%を削減する必要性があると認識)
  • 2050年までにネットゼロを達成するため、化石燃料からの移行を加速させる
  • すべての温室効果ガス・セクターを対象として排出量を削減する
  • 各国ごとに異なる道筋を考慮したうえで、分野別に排出量削減に貢献する
    (2030年までに再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍、化石燃料、ゼロ・低排出技術(原子力、CCUS、低炭素水素等)、道路部門等における取り組み等)

このようにCOP28の成果文書内では、排出量削減の方法として再生可能エネルギーだけではなく、水素、原子力、CCUSなど低炭素技術も併記。企業にとっては排出量を減らす選択肢が増え、より取り組みやすくなったと言えるでしょう。

「国が決定する貢献(NDC)」の強化

NDC(Nationally Determined Contribution)とは、温室効果ガスの排出削減目標のこと。パリ協定では、すべての国が自国のNDCを定めることが規定されています。各国は5年ごとに行われるGSTの結果を踏まえ、自国のNDCを更新、策定したNDCに向けた施策を実施し、その報告を2年ごとに提出しなければなりません。

このNDCについてCOP28では、「すべての締約国が2030年の温室効果ガスの排出削減目標(NDC)を1.5℃目標と整合的に設定すること」を含めた議論が予想されていました。

GSTとNDCと報告の関係

話し合いの結果、今回の成果文書内では「各国の次回の削減目標を含むNDC提出時に、どのようにGSTからの結果を考慮したかの説明が必要である」と明記。予想されたような強い表現には至りませんでしたが、日本も含めた各国において重要な一歩となったことは間違いないでしょう。

「損失と損害」基金(ロスダメ基金)の運用

「損失と損害」基金とは、前回のCOP27で設立された気候変動からの悪影響に特に脆弱な途上国を支援する仕組み。気候変動は、砂漠化や海面上昇などの異常気象を引き起こし、自然や人間に対し悪影響とそれに関連した損失と損害を与えます。またその損失と損害は、気候変動の進行に比例して増加するとの予想も。そこでCOP28では、気候変動の悪影響を受けやすい国々やコミュニティーへの基金の運用についての検討、採択が予定されていました。

実際COP28では、基金の基本文書を含む運用に関する制度の大枠についての決定。具体的に成果文書には、以下のような内容が記載されています。

  • 基金の支援対象は気候変動の影響に特に脆弱な途上国であり、世界銀行の下に設置する
  • 先進国が立ち上げ経費の拠出を主導する
  • 一方、公的資金、民間資金、革新的資金源等からも拠出を受ける
  • 資金措置を構成する機関(世銀・IMF、ワルシャワ国際メカニズム、サンティアゴ・ネットワーク(SN)等)と基金が定期的に対話を実施し、さまざまな資金措置と基金とが調整・協調してロス&ダメージに対応していく

なお日本は、基金の立ち上げ経費として1,000万米ドルを拠出する用意があると表明しています。

緩和

気候変動の緩和とは、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らす取り組みのこと。COP27では、2030年までの緩和の野心と実施を向上するための「緩和作業計画(Mitigation Work Programme)」が策定され、COP28ではこの緩和作業計画が初めて実施されました。

今回は公正なエネルギー移行と交通システムの脱炭素化を議題として2回のグローバル対話を実施。具体的には以下のような内容が決定されました。

  • この対話の報告(再エネ、省エネ、CCUS等に関する実施可能な解決策等を含む)や「緩和野心閣僚級会合」の議論について留意する
  • 補助機関会合で進捗評価を行う

適応

気候変動の適応とは、すでに生じている、あるいは将来予測される気候変動の影響(例:火災、洪水、干ばつ、より暑い日や寒い日、海面上昇のリスクが高まるなど) による被害を回避・軽減させる取り組みのこと。

COP28ではCOP26からの2年間に及ぶ議論の成果として、適応に関する世界全体の目標(GGA:Global Goal on Adaptation)の達成に向けたフレームワークが、採択されました。具体的には成果文書に記載されたのは、以下のような内容です。

  • フレームワークは、国主導かつ自主的なものである
  • テーマ別の7つの目標(資源・水災害、食料・農業、健康、生態系・生物多様性、インフラ、貧困、遺産保護など)と、適応サイクル(脆弱性の評価から計画・実行・モニタリングまで)についての4つの目標を設定
  • これら目標をどのように計測していくかの指標を検討する2年間の作業計画の発足

COP28を受けた日本の対応

ここまでご紹介した話題以外にも、技術開発や移転、気候変動対策の実施による社会経済的な影響など、幅広いテーマについて議論が行われたCOP28。このような議論や成果を、日本政府はどのように受け止めたのでしょうか?

まずGSTの実施について、西村経済産業大臣はCOP28で議論された内容を踏まえ、来年から2035年度に向けた新たな目標の検討を始めたいとの考えを示しています。

その一方で伊藤環境大臣は、2030年までの世界全体の再エネ容量引き上げに関して、「太陽光発電の導入に伴う環境破壊の問題もあり、必ずしも3倍にできる容量があるとは考えておらず、あすや来年に3倍に増やすことは不可能である」と言及。しかしながら「世界で3倍にすることは必要である」とし、発展途上国への技術供与や、新たな再生可能エネルギーの技術開発などといった面から進める姿勢を示しています。

加えて日本を含む世界各国は、今回のGSTを踏まえ次の削減目標(NDC)を策定しなければなりません。 COP28の成果文章内では「1.5℃目標達成」に向けたNDCの強化について、「推奨」という表現に留まりましたが、国際的な動向を見ても目標設定が厳しくなっていくことは明らか。

日本でも今後、2035年までの排出量60%削減に向けた目標が設定されたり、EUなど対策が厳しい国の影響を受けたりする可能性は、大いにあると言えるでしょう。

また企業も第1回GSTの成果を考慮し、自主的な取り組みを進めることが重要です。再生可能エネルギー以外の排出量を減らす選択肢(原子力、CCUS、低炭素水素など)が増えた状況を利用して、自社の取り組みをより強化していくことをおすすめします。

まとめ

今回のコラムでは、COP28についてお伝えしました。今回ご紹介してきた決定内容は、閉幕後こそ国や企業に影響を与えると考えられます。政府の動向に引き続き注目し、対応に出遅れないよう情報をキャッチアップしていきましょう。

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【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

『環境省. (2023, October 30). COP(コップ)ってなに? 気候変動に関するCOPを紹介. 脱炭素ポータル』

『環境省. 国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)・京都議定書締約国会合(CMP)・パリ協定締約国会合(CMA)』

『環境省. パリ協定の概要』

『環境省. (2023, March). P.4 パリ協定6条への期待. COP27を踏まえたパリ協定6条(市場メカニズム) 解説資料』

『外務省. (2022, November 22). 国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27) 結果概要』

『環境省. (2023, November 28). 国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)概要、予想される主要論点・テーマ. COP28について GX実行会議(第9回)』

『JETRO. (2022, November 22). COP27閉幕、損失と損害に係る途上国支援基金を設立へ』

『United Nations. (2023, December 13). Conference of the Parties Serving as the Meeting of the Parties to the Paris Agreement』

『COP28 UAE. (2023, December 13). COP28 PRESIDENT DELIVERS REMARKS AT CLOSING PLENARY』

『外務省. (2023, December 18). 国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要』

『外務省. (2023, December 1). 損失と損害(ロス&ダメージ)に対応するための新たな資金措置(基金を含む)の運用化に関する決定の採択について』

『NHK. (2023, December 3). 経産相“脱炭素社会へ新たな政府目標検討始めたい”日曜討論』

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