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「BELS」(ベルス:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)とは、建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、ビルや住宅の省エネ性能を5段階の星の数で表示できる制度のことです。
BELSは、日本の建築物省エネ法第7条に基づき、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運営するとともに、国交省から告示されている省エネ性能表示制度に対応しているものです。2024年4月から上記のような「再エネ性能ラベル」の表示が努力義務になっています。この省エネ性能ラベルの表示については「自己評価」と「第三者評価(BELS認証)」がありますが、BELS認証の取得自体は義務ではありません。ですが、BELSのような客観的なお墨付きを得ることで信頼性の高い省エネ性能のアピールになります。なお、BELS対象となる建築物は新築か既存建築物かを問いません。また建物全体ではなくフロアごとの評価も可能となっています。
BELSが省エネ性能の高さを示しており、必ずしもゼロエネルギーである必要はないことに対し、ZEB(ゼブ:Net Zero Energy Building )やZEH(ゼッチ:Net Zero Energy Housing)ではゼロエネルギーを示している点が大きな違いとなります。そのためBELSの基準よりもZEBやZEHの基準は厳しくなっており、BELSで5つ星を獲得しておくことがZEB・ZEHの評価を取得するために必要となります。
CASBEE(キャスビー:Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)は、エネルギー効率だけでなく室内の快適性や景観への配慮などまで含めた、総合的な建物の環境性能評価となっています。そのためBELSが建物の燃費の良さのみにお墨付きを与えているのに対して、CASBEEは建物の総合的な環境負荷の度合いに対してお墨付きを与えているという点で異なります。
LEED(リード:Leadership in Energy and Environmental Design)とは、環境に配慮した建物を評価するアメリカの認証制度です。米国グリーンビルディング協会(U.S. Green Building Council)が開発・運用し、GBCI(Green Business Certification Inc.)が認証審査を行っている建築や都市の環境性能評価の制度であり、CASBEEのアメリカ版といった位置づけになります。LEED認証マークによって、設計・建設段階や維持方法などにおいて、人や環境に対する安全性を配慮し、資源を削減し、再生可能なクリーンエネルギーを促進する建物であるとアピールできます。
BELSを取得するメリットとしては、以下の3つが考えられます。
それぞれ見ていきましょう。
日本では、2030年に新築物件についてZEB・ZEH水準の省エネ性能の確保、2050年に既存物件も含めZEB・ZEH水準の省エネ性能の確保といった、建物に関する環境基準の段階的な引き上げが予定されています。これに先立ち2024年4月からは住宅の販売・賃貸広告に「省エネ性能ラベル」を表示する制度が始まりました。そのためBELS認証を取得することにより、こうした省エネ性能表示制度の変化へ向けて準備を進めることが可能となると考えられます。
BELS認証による省エネ性能表示を用いると、住宅購入を検討している一般の人たちにも信頼性高く、ビルや住宅のエネルギー効率の高さや光熱費の削減能力の高さをアピールすることができます。実際に新築マンションの募集などにおいて光熱費の低減をアピールする材料として、BELS認証を得たことをニュースリリースに掲載したり、テナントの募集パンフレットに掲載したりしている事例も増加しています。
建物に関する国や地方の補助金制度においては、住宅等の性能を証明する書類として、ZEHやZEBマークが表示される評価書を用いることができる場合があります。BELSの評価書類には省エネ性能を満たせばZEBやZEHマークを表示させることが可能なため、このBELS評価書類を補助金の申請として用いることが可能となります。
近年のBELS認証事例としては、滋賀県近江八幡市のマンション住宅「グランドパレス近江八幡」が2024年9月30日にBELSの最高ランク5つ星を獲得しました。断熱性の高い外壁に加え、トイレやシャワーにおける節水機能の高さ、またガス使用量の少ない給湯機やLED照明といったZEH仕様の高効率のものを採用し、優れた省エネ性を実現しています。
「BELS」は主に以下の2つの指標で評価されます。
建物の外皮性能とは、壁や床、屋根や天井、窓、といった外皮の断熱性、遮音性、耐久性等の能力を数値で表しています。
BEIとは、国が定める省エネ基準からどの程度省エネを実現できているかを見る指標です。設計時の消費エネルギーと国の基準のエネルギー消費量の比率で計算し、比率が低いほど省エネであり多くの星を獲得できます。
住宅性能評価・表示協会に登録された専門の評価機関が省エネ性能を客観的に評価し、認証されれば以下のような評価書が交付されます。
BELSの認証には審査完了まで約4週間かかり、取得にかかる費用としては、「審査費用」と「代行費用」の主に2つが必要となってきます。
「審査費用」は審査のために民間検査機関に支払う費用のため、必ず必要となります。対して「省エネ計算の代行費用」は、自分で申請を行う場合と、申請代行を行う場合の2つの方法があります。自社で行う場合は費用がかかりません。しかし申請においては書類を5種類ほど揃える必要があり、場合によっては修正再申請が必要となる煩雑な業務となるため、申請代行会社に委託する場合もあります。申請代行を依頼する場合、この「代行費用」が追加で必要となってきます。
数種類の申請書類を記載し、BELS評価機関に送付。審査により認められると評価書が交付されます。申請窓口の検索は、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会のHPから、「申請したい都道府県」と「建物種類(住宅か非住宅)」を選択して行います。またBELSの申請タイミングは建築物の着工・竣工に関わらずいつでも可能となっており、年間を通して申請を受け付けています。
今回のコラムでは、建物の省エネ性能を示すBELSについて解説しました。今後の省エネ表示規制の強化へ向けた準備や補助金申請用の書類としても、また建物の信頼性向上のためにも、BELSによる省エネ性能のアピールは効果的な手段の一つとなる可能性があります。そのため現時点から申請書類に必要な情報や手順などについて知り、自社の建物に活用していきましょう。
弊社は環境経営におけるパートナーとして、CDPやTCFDなど各枠組みに沿った情報開示や、GHG排出量の算定のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
< 出典 >
・BELS 表示例. 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会(2024年11月参照)
・BELS(建築物省エネルギー性能表示制度).一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 (2024年11月参照)
・BELS 申請~評価書等交付の基本的な流れ. 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会(2024年11月参照)
・建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度 事業者向け概要資料.国土交通省(2024年11月参照)
・LEEDとは .Green Building Japan(2024年11月参照)
・New LEED Pricing to Go into Effect on May 1. (2023, February 9). USGBC. (2025年1月参照)
・別表2 BELS評価業務 非住宅建築物に係る評価料金. 日本ERI株式会社(2025年1月参照)
・手数料. 株式会社日本確認検査センター(2025年1月参照)
・CASBEE料金. 株式会社東京建築検査機構(2025年1月参照)
・評価料金. 株式会社東京建築検査機構(2025年1月参照)