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EcoVadisとは主にバイヤー企業向けに、サプライヤー企業のCSR方針や施策、業績の評価サービスを提供している会社です。「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野で、世界175カ国、10万社以上の企業を評価しています。
パリを本社に、ニューヨーク、ロンドン、香港など主要都市に拠点をもち、日本オフィスは2019年に設立されました。企業は0~100点で採点され、平均スコアは50点前後となっています。
また点数ごとにメダルが付与されます。2024年のメダル付与要件では、スコアが上位1%でプラチナ、上位5%でゴールド、上位15%がシルバー、上位35%がブロンズのメダルが付与されることになっています。
EcoVadisは、グローバルサプライチェーンを通じた企業の環境・社会的慣行の改善を目指して2007年に設立されました。近年、エシカル消費の拡大や森林破壊防止法・児童労働の禁止など持続可能な調達に関する国際的な法律が制定され始めており、世界中の多くの企業がサプライチェーン全体でのサステナビリティの実現に取り組んでいます。
またサプライヤーの選定においても、ESGの観点からEcoVadisのサステナビリティ調査の評価結果を参考にする動きが広がっています。
EcoVadisが近年注目されている理由として、世界で1000社を超えるバイヤー企業がEcoVadisを活用してサプライヤーを評価していることがあります。
欧州ではEcoVadisの評価を取引条件にする企業も出てきました。バイヤー企業は、サプライヤー企業に回答を要請し、EcoVadisのSaaS型のプラットフォームを通じてサプライヤー企業全体のポートフォリオを管理します。
EcoVadisの評価対象には上場企業だけでなく非上場企業も含まれるため、より包括的なサプライヤー管理が実現しています。実際、回答企業の80%以上が中小企業です。
EcoVadisは約190の業種、地域、企業規模ごとにカスタマイズされた質問票を作成しています。サプライヤー企業が回答した質問票は、EcoVadisの専門アナリストが分析・評価を行います。また企業の回答には裏付けの証明書類の添付が必須となっており、評価の客観性を高めています。
EcoVadisのHPに企業情報を登録します。また回答要請があった企業から招待メールを受け取っている場合、自動的に依頼元企業が進捗状況を把握して評価結果を共有することができます。登録後、EcoVadisのプラットフォームにアクセスできるようになります。
規模、業種、事業展開国に応じて企業ごとに50問程度からなる独自の質問票が用意されます。それぞれの回答には、回答内容を裏付ける証明書類の添付が必須となっています。企業ごとにカスタマイズされた質問票が用意され回答していく方式は、同じく多くの企業が賛同しているESGレーティングのCDPと同様です。ただし評価分野に違いがあり、EcoVadisは環境だけでなく人権や倫理(汚職や腐敗)や資材調達も対象としています。
質問票回答と証明書類を提出後、サステナビリティ・アナリストが分析評価します。企業のサステナビリティ・マネジメント体制を評価するEcoVadisの手法は、GRI(Global Reporting Index)、ISO26000、グローバル・コンパクトの指導原則などの国際基準に則っています。アナリストが回答とその証明書類を精査し、回答の整合性をチェックします。
またEcoVadisの採点の特徴として360°ウォッチがあります。360°ウォッチは採点の際にEcoVadisのリサーチチームによる補足的なスクリーニングリサーチで、企業が提出した証明書類の精査に加えて実施されます。外部機関のウェブサイトから入手可能なプレスリリースなど外部リソースを精査しています。社会的、環境的、倫理的な業績管理に対する企業の取り組みについての情報と意見が収集され、重大な問題があった場合はスコアにマイナスの影響を与えます。
採点の結果であるスコアカードはEcoVadisプラットフォームにて閲覧できます。スコアカードの有効期間は12ヶ月間です。またプラットフォームを介して、他社にスコアカードなどを共有することもできます。これによって、新たにバイヤー企業から回答要請を受けたとしても、回答を再度作成する必要がなく、実際に回答するのはスコアカードの有効期間12か月に1回だという点もEcoVadisの特徴のひとつです。
採点を受けたあと、プラットフォームでは評価された企業の環境、労働と人権、倫理、持続可能な資材調達という4つのテーマ別スコアと総合スコア情報を確認することができます。
しかしEcoVadisはESGレーティング機関であるため、改善のための具体的な施策は提供していません。企業は自主的に失点箇所を確認し、社内・サプライチェーン全体で取り組んでいく必要があります。また質問票への回答には証明書類が必要なため、取り組みを文書化する体制作りも欠かせません。
サステナビリティへの消費者の注目も増しており、企業のESG活動が、サプライチェーン全体を含めて評価される機会が多くなっていくでしょう。それにともなって、EcoVadisの回答要請を出すバイヤー企業の増加・回答要請を受けるサプライヤー企業の数も多くなると予測されます。
また今後はスコアによってサプライヤー企業の選定を行うバイヤー企業も増加する可能性があり、サプライヤー企業はバイヤー企業からの回答要請に対応するだけでなく、スコアアップに向けて取り組む必要があります。
EcoVadisの評価基準に関する知見やESGに関する包括的なノウハウを有するコンサルティング企業は、企業価値の向上において強力なパートナーとなり得ます。ESGパフォーマンスの改善に向けた積極的な行動により、スコアの向上が期待できます。EcoVadisスコア向上支援を含む、弊社ESGレーティング対応支援について詳しく知りたい方は下記をご確認くださいませ。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
出典 :
EcoVadis社のサステナビリティ評価で「ブロンズ」を獲得しました | スペラファーマ株式会社 SPERA PHARMA, Inc.
エコバディス社のサステナビリティ調査において「ゴールド」評価を獲得 | サステナビリティ | 住友化学株式会社
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