今話題のオフサイトPPAとは?-企業の再エネ電力活用に向けて- 

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今話題のオフサイトPPAとは?-企業の再エネ電力活用に向けて-

2016年に発効されたパリ協定にて、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標が、世界全体で掲げられました。

現在、気候変動問題の解決に向けて、化石燃料を用いた発電から再生可能エネルギー(以下再エネ)を用いた発電に移行しています。

2024年4月に資源エネルギー庁より公開された「令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績(確報)」によると、日本の一次エネルギー国内供給量で前年比+になっているのは再エネのみです。

再エネに注目が集まっている中で、同様に注目されているのが「オフサイトPPA」です。

今回はオフサイトPPAについて、概要・種類・メリットなどを解説していきます。

そもそもPPAとは

オフサイトPPAについて解説する前に、そもそもPPAとは何なのか説明します。

PPAとは、Power Purchase Agreementの略称で、日本語では電力購入契約と訳し、「第三者モデル」とも呼ばれています。

PPA事業者と呼ばれる電力を売る事業者が、企業や個人などの電力を必要とする需要家の保有する建物や土地を借り再エネ発電設備を設置して、発電した電力を需要家に販売。

需要家は、使用した分の電気代をPPA事業者に支払えば良く、設備の保有や管理をする必要がないのが特徴です。

また、電気料金は固定価格のため、電力価格変動の影響を受けません。

オフサイトPPAとは

オフサイトPPAとは、需要地ではない別の場所に導入された再エネ発電設備で発電された電力を、一般の電力系統を介して需要家へ供給する契約方式のことです。

ここで言う需要地とは、需要家が実際に電力を使用する場所(工場や会社など敷地内)のことを指しています。

敷地外の発電所は保有している土地ではなく、事業者の土地・設備である点がポイントです。

オフサイトPPAの仕組み

オンサイトPPAとの違い

PPAにはオフサイトPPA以外に「オンサイトPPA」と呼ばれるものも存在します。 

前述していたPPAの説明は、基本的にこのオンサイトPPAのことを指しています。 

需要地を追加して再度図式化したのが以下の図です。

オンサイトPPAの仕組み

ではいったい「オフサイトPPA」と「オンサイトPPA」はどのような違いがあるのか、表にまとめました。 

オフサイトPPAオンサイトPPA
発電設備事業者のもの事業者のもの
設置場所敷地外敷地内
非常時の使用可否不可
託送料金必要不要
電力供給量たくさんの供給可能敷地の広さに左右される

前述していた設置場所の違い以外にも、いくつか異なる点があります。

オフサイトPPAは敷地外に発電設備があり、小売電気事業者を挟んで需要地に送電するため、非常時には使用できず、別途託送料金も必要です。

一方オンサイトPPAは、敷地内に発電設備を設置していることから、蓄電池を導入することで非常用電源としての活用も可能で、一般の電力系統を介さないため託送料金もかかりません。

これだけ聞くと「オンサイトPPAの方がメリット多いし良さそう」と感じる方もいると思います。しかし、オンサイトPPAは発電設備を敷地内に設置することから、十分な広さがないと発電量に限度があり、そもそも契約ができない可能性があります。

オフサイトPPAではこの問題は生じないため、自社に適した契約を結ぶことが大切です。

オフサイトPPAの種類

また、オフサイトPPAにも種類があります。

フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2種類です。

それぞれ見ていきましょう。

フィジカルPPA

フィジカルPPAは、電力と一緒に環境価値も需要家に授けられます。環境価値は、再エネ電力証書を用いてやり取りされます。

また、フィジカルPPAでは小売電気事業者を介するため、電気代のほかに託送料金や小売電気事業者に対する手数料も必要です。

大きな特徴として、電力の市場価格変動の影響を受けず、契約期間中は固定のPPA契約価格で取引されます。そのため、長期で電力価格を固定することが可能です。

フィジカルPPAの仕組み
出典:自然エネルギー財団「コーポレートPPA 日本の最新動向 2024年版」を基に弊社作成

バーチャルPPA

バーチャルPPAでは、需要家は事業者から電力を購入せず、環境価値のみ購入します。

事業者は市場や小売電気事業者に再エネ電力を売却。需要家はあらかじめ契約で決めていた固定価格と事業者が売却した市場価格の差額を支払い、相当する分の環境価値を購入します。

需要家は通常通り小売電気事業者等から電気を購入します。

バーチャルPPAの仕組み
出典:自然エネルギー財団「コーポレートPPA 日本の最新動向 2024年版」を基に弊社作成

企業がオフサイトPPAを結ぶメリット

ここまでは各PPAの詳細を見てきました。

以上を踏まえて、企業がオフサイトPPAを結ぶメリットは5つあります。

  • 費用を抑えて再エネを導入できる
  • 自社の設置個所の広さに関わらず導入できる
  • 気候変動対策のアピールや自治体・取引先の要請に応えることができる
  • 長期にコストを確定できる
  • RE100やCDPへの取り組みに活用できる

それぞれ見ていきましょう。

費用を抑えて再エネを導入できる

オフサイトPPAでは、発電設備の設置費用が不要なため初期費用が不要です。

自社の広さに関わらず導入できる

オフサイトPPAでは、オンサイトPPAとは違い敷地外の発電設備を使用するため、自社敷地の広さに影響を受けず導入することが可能です。

気候変動対策のアピールや自治体・取引先の要請に応えることができる

再エネを使うことで企業としてのCO2排出量を減らすことができます。気候変動対策に取り組み、サステナビリティ報告書や様々な情報開示フレームワークで公開することで企業のブランドイメージを高め、金融機関や投資家、取引先、消費者などさまざまなステークホルダーへのアピールに繋がります。

長期にコストを確定できる

オフサイトPPAは10~20年の長期契約で結ばれることが多いですが、その期間の電力を固定価格で購入するため、その間にかかる電気代にあたりを付けることができます。

化石燃料の価格が不安定かつ高騰している昨今、再エネを活用することで市場価格変動の影響を受けないというのは大きなメリットと考えられるでしょう。

RE100やCDPへの取り組みに活用できる

RE100では、再エネ電力の調達手段としてオフサイトPPAが認められており、CDPでも再エネ証書の使用が認められています。

技術条件を満たすのが厳しいといわれているRE100でも活用することができるというのは大きなポイントのひとつです。

オフサイトPPAのデメリット

一方で、オフサイトPPAにはデメリットもあります。

一番は、気象要因や技術要員によって発電量が担保できないリスクを孕んでいる点です。メリットでもあげたように、オフサイトPPAは長期契約かつ固定価格という特性上、コストをあらかじめ計算できます。しかし、発電量が十分担保できなかった場合、十分な電力が供給されずに別途電力を購入しなければならない、といったことが起こる可能性もあるでしょう。

また、バーチャルPPAの場合、市場価格が下落している際にはリスクを需要家側が引き受ける必要があるため、需要家側の財務上のリスクがある点も指摘されています。

ただし、他の環境価値や再エネ電力の提供といった形で補填されているケースや、需要変動に偏りがある場合に備えて、需要家側が契約解除できたり違約金の設定を盛り込んだ契約が海外では存在しています。そのため、リスクはあるものの対応も進んできているというのが現状です。

オフサイトPPAの最新情報

2024年2月、東急不動産株式会社・株式会社リエネの2社によって、オフサイトPPAスキームを活用した取り組みを開始することが発表されました。横浜市内にある小中学校や高等学校の屋上に太陽光発電設備を設置し、平日は学校で活用、休日は同市の商業施設に供給するという仕組みです。

この仕組みでは、東急不動産が発電事業者、リエネが小売電気事業者、商業施設が需要家となっています。

詳しくはこちらのリリースをご覧ください。
東急不動産 「横浜市の大型商業施設「ノースポート・モール」に 横浜市内の学校で発電した再エネ電力をオフサイト型 PPA で導入 ~「都市型地産地消モデル」で、横浜市の『Zero Carbon Yokohama』の実現へ貢献~」

まとめ

今回は、オフサイトPPAについて解説しました。CO2排出削減という一つの国際的なテーマがある中で、J-クレジットや証書を活用した企業の活動が盛んになっています。この記事でオフサイトPPAが一つの選択肢として存在することを知っていただき、皆様のお役に立っていれば幸いです。

株式会社エスプールブルードットグリーンでは、証書クレジットの調達支援をしております。今回ご紹介したオフサイトPPAに関するご相談も承っております。

ご興味がございましたら、こちらをご確認の上、お気軽にお問い合わせくださいませ。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

環境省 「オフサイトコーポレートPPAについて」 

環境省 PPAモデル|再生可能エネルギー導入方法 |「再エネスタート」はじめてみませんか 再エネ活用

資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて」 

自然エネルギー財団 「コーポレートPPA 日本の最新動向 2024年版」

自然エネルギー財団「企業が結ぶ自然エネルギーの電力購入契約 コーポレートPPA実践ガイドブック」

RE100 TECHNICAL CRITERIA

東急不動産 「横浜市の大型商業施設「ノースポート・モール」に 横浜市内の学校で発電した再エネ電力をオフサイト型 PPA で導入 ~「都市型地産地消モデル」で、横浜市の『Zero Carbon Yokohama』の実現へ貢献~」 

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