2024年10月をもってCDP 2024の回答提出期間が終了しました。今回は、迫りくるCDP 2025についてお伝えしていきます。
昨今、世界の企業が気候変動や生物多様性などの課題にどのように取り組んでいるのか注目を集めています。その取り組みを投資家に代わって分析・評価する役割を担っているのが「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」です。CDPは、企業に対して環境に関する質問書を送付し、その回答を集計・公開しています。 CDP 2025については、内容やスケジュールなどが公開されておらず不透明な部分もありますが、CDP 2024で240件以上のCDP回答支援を行った実績がある弊社の予想も交えながらご紹介します。
目次 Index
CDPは 2002年に設立され、企業に対して環境に関する取り組み状況を問う質問書を送付し、その内容を評価し開示している非営利団体です。気候変動のみならず水セキュリティ(水管理)やフォレスト(森林管理)の質問書を毎年企業に対して送付し続けており、その回答率は年々増加しています。最新の2022年のCDPレポートによると、回答した組織数は過去最多の約2万社にのぼり、前年に比べて38%もの増加を記録しています。これは投資家やサプライヤーなどが、企業の環境に関する透明性を重視する流れが加速している証拠といえるでしょう。
日本においてもこの動きは顕著です。プライム市場に上場している1,000社以上の企業を含む、1,700以上の企業・団体がCDPの質問書に回答しています。CDPのスコアは企業のサステナビリティへの対応度を評価する基準として機能しています。
CDPについてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
CDP 2024は CDP 2023以前から大幅な変更が加えられました。最も大きな変更点は、3つのテーマの質問書が統合されて、一つの質問書になったことがあげられます。また、これまで設問はTCFDや国連グローバルコンパクトなどに整合していましたが、加えて新しい環境情報開示のフレームワークであるIFRS S2やTNFDに整合するように設問が変更・追加されました。
より詳しく CDP 2024の新要素を振り返ります。
これまでCDP質問書は「気候変動」、「水セキュリティ」、「フォレスト」の3つがありましたが、 CDP 2024からはひとつの質問書に統合されました。統合のメリットとして、各質問書で重複する質問が削除され、開示対応の負担は一部軽減されました。スコアはこれまでと同様に「気候変動」、「水セキュリティ」、「フォレスト」のテーマごとに発表されます。また中小企業向けの質問書も導入され、上場企業だけでなく幅広い企業が対応を迫られることになりました。
もうひとつの大きな変更点としてCDP 2024の質問書からIFRS S2(気候関連開示)・TNFDと整合したことが挙げられます。この変更により、新たな情報収集が必要となり負担が増えたといえるでしょう。IFRS S2とは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定したフレームワークIFRSの中でも特に気候関連のリスク及び機会に関する開示要求項目をまとめているもので、日本では2026年頃から導入が予定されています。TNFDは企業や金融機関が、自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を評価・開示するためのフレームワークです。「生物多様性」に関連する設問だけでなく、「気候変動」、「水セキュリティ」、「フォレスト」テーマにおいてもTNFDの概念が登場しました。
CDP 2024の回答期日は CDP 2023から約3か月後ろ倒しされた2024年10月9日でした。一方 CDP 2025は、 CDP 2023同様の7月回答締め切りに近いスケジュールになる可能性が高いです。
そのため、 CDP 2025はタイトなスケジュールとなり、早めの体制づくりが求められるでしょう。
加えて、締め切りが7月頃となった場合には多くの企業で昨年度(2024年度)の取り組みについて開示することとなり、GHG排出量や燃料、水の取水量などのデータの収集についてはあわただしい対応となることが予想されます。
特にCDP 2025からCDPへの初回答を検討されている企業においては、質問書の内容の確認、自社の環境に関するお取り組みの把握・整理から必要となるため、前年度に回答済みの企業よりも工数が多くなるでしょう。そのため CDP 2025の回答を行うかどうかの検討、回答の準備は年内から取り組み始めることでよりスムーズな開示へとつながります。
ここからは CDP 2025の変更点について2つの予想をお伝えします。
ただし、こちらはあくまで弊社の予想であり、CDP 2025の実施内容とは異なる場合がありますのでご承知おきください。
予想される変更点は、
の2点です。それぞれ見ていきましょう。
CDP 2024に新しい環境情報開示のフレームワークであるIFRS S2やTNFDに整合するように設問が修正・追加されましたが、CDP2025においてはよりその傾向が強まると考えられます。
サステナビリティ関連の非財務情報が、
などに与える影響について、より詳細に問われる設問の増加などが予想されます。
CDP回答書には「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」の3テーマに加えて、「生物多様性」と「プラスチック」のテーマがあります。生物多様性とプラスチックに関する質問については、2024年までは採点の対象外でしたが、将来的に採点の対象となるとされていました。
したがって、CDP 2025において生物多様性やプラスチックについてもスコア付けされる可能性があります。
CDP 2025から回答を始めることを検討している企業がやるべきことを2つご紹介します。
まずは、CDPからの回答依頼について確認が必要です。企業に対しては「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」の最大3テーマについて回答の依頼が来る可能性があります。CDP 2024に回答要請があったテーマについては、引き続きCDP 2025においても対応が必要なケースがほとんどです。
2つ目は、集めるべき情報やデータの把握です。把握の方法としてまずは、CDPのHPから回答書の内容を確認することで必要情報やデータは把握できます。ただ、CDP質問書は記載されている専門的な環境用語がそもそも難しく、元々英語で作成されているということもあり、翻訳されても馴染みのない単語や言い回しが多用されていたりと難解です。
その場合は、ベンチマーク企業の実際の回答をいくつか確認することで、CDPの全体観やどのような情報やデータが必要であるかのイメージをつかむことができます。このように事前に必要情報やデータを把握しておくことで幅広い環境関連の知識や情報が必要になることが分かり、自社での対応が可能かどうか、外部コンサルタントを導入するかの検討材料のひとつになります。
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今回のコラムでは CDP 2025の予想についてお伝えしてきました。 CDP 2025は CDP 2024と比べて負担が増える可能性もあり、これまで以上に早めの取り組みが重要です。未回答企業も CDP 2024に回答した企業も、 CDP 2025では変更点を踏まえながら回答準備をすることが必要でしょう。「回答に向けて何をすればいいのかわからない」、「変更点にどう対応すればよいかわからない」場合は、CDP回答支援サービスを行う弊社にお気軽にご相談ください。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
<出典>
・Corporate Disclosure Key Changes for 2024: Part I. CDP. (2024年10月参照)
・CDP 気候変動レポート 2022: 日本版 運用資産総額130兆米ドルに達する680超の金融機関を代表して. (2023, April). CDP. (2024年10月参照)