CDPとは?質問書の内容やスコアについてわかりやすく解説

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CDPとは?質問書の内容やスコアについてわかりやすく解説

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CDPとは

世界の主要企業がどのような環境活動を行っているのか、投資家に代わって各企業宛てに質問書を送り、企業の回答内容について分析・評価を行い、その結果を開示している非営利団体です。 2000年に英国で設立されたCDPは、投資家からの指名を受けた企業もしくは、時価総額等を基準に選定された企業に対して毎年質問書を送付しています。 

企業側からの回答率も年々高まっていて、日本における2022年度の回答が最も多かった気候変動質問書の回答数は1,101社でした。(自主回答含む) 2023年度はすべての質問書を合計して約2000社が情報開示をしたと、CDPによって公表されています。 

参照: CDP AND SAM COLLABORATE TO STREAMLINE SUSTAINABILITY DATA REPORTING OF GLOBAL CORPORATIONS 

CDPが収集した企業データはスコアリングされ、主にESG投資を行う機関投資家にデータベースとして参照されており、企業の環境への取り組みの指標として全世界的に影響力を強めています。2023年度は全世界で約750機関がCDP Capital Marketに署名していることからも、企業に与える影響力は年々大きくなっているといえるでしょう。 日本からは、明治安田生命や大和証券グループ、三井住友、東京海上ホールディングス等が署名しています。 

参照: How companies are selected -CDP 

質問書に回答し、高いスコアを獲得した企業はESG投資の対象となりやすく、企業のブランド力を高められます。一方、回答を行わないもしくは低いスコアの企業は投資先の選定から外れる可能性もあり、企業は慎重な対応が必要です。 

CDPによる評価について

CDPスコアとは

CDPは企業の環境問題への取り組みを、スコアを用いて判別しています。 CDPのスコアは大きく分けて5つに分かれています。指標の概要は以下の通りです。 ※上から順に、A、A-、B、B- …の順で良いスコアとなっています。 

■リーダーシップレベル(A、A-)

…先進的に環境リスクをどのように解決できるかを考え、イニシアチブをとって行動している。

■マネジメントレベル(B、B-)

…自社の環境リスクや影響について把握し、行動している。

■認識レベル(C、C-)

…環境リスクについて、自社の状況を認識している。

■情報開示レベル(D、D-)

…自社の状況を把握しようとしている。

■無回答企業(F)

…回答が期限内に得られなかった企業。(回答しなかった企業)

CDPのスコアについて、こちらの記事でより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください!

CDP【上級者向け】 ――さらなるスコアアップに向けたポイントを解説

評価・情報開示の流れ

CDPは対象となった企業宛てに回答を要請し、企業は6月から9月後半の間に、オンライン回答システム(ORS)上で質問書に回答します。 期限までに提出された回答内容は、CDP独自のスコアリング基準に則り、スコアラーによる採点と機械的な自動採点がなされます。 その得点によって算出されたものが最終的なスコアです。 回答結果は、スコアと共に同年の12月頃にCDPのHP上に公表されます。 (※2023年度版は2024年初頭の公表に変更) 

CDPの質問書に回答するメリット

CDPの質問書に回答するメリットは以下の3つです。 

  • ESG投資を受けやすくなる
  • TCFDの情報開示において応用が利く 
  • 環境意識の高い企業としてブランディングできる

それぞれ見ていきましょう。 

ESG投資を受けやすくなる

CDPスコアは機関投資家だけでなく個人投資家が投資先企業を選定する基準の一つです。 現在はGoogle FinanceでCDPの気候変動スコアが企業情報として表示されるなど、企業の価値を示す指標としてもスコアの重要性が増しています。 日本国内でもESG投資の運用資産額は年々増加をしており、今後もスタンダードな投資手法として浸透していくと考えられます。

TCFDの情報開示において応用が利く

質問書の説明で前述した通りCDP(気候変動質問書)はTCFDと整合しており、TCFD同様、企業はCDPの質問書に回答することで気候変動に関わるリスクを把握し、自社の経営戦略の策定に役立てることが可能です。

環境意識の高い企業としてブランディングできる

良いCDPスコアをとることでESG投資先として選定されるだけでなく、一般消費者に向けても環境意識の高い企業としてアピールできます。主にZ世代を中心にエシカル嗜好と呼ばれる、倫理的な行動をとる消費者が増加しており、欧州などでは商品やサービスの選定基準として提供元企業の環境経営情報を参考にする動きも見られています。 

CDPの質問書に回答するデメリット

一方で、CDPの質問書に回答するデメリットは以下の2つです。 

  • 回答費用がかかる
  • 回答の手間がかかる

それぞれ見ていきましょう。 

回答費用が掛かる

投資家の要請によってCDPから質問書が送られてきた企業の場合、質問書への回答には「回答事務費用」がかかります。2024年度からは、日本では「Foundation Level」と「Enhanced Level」の2プランから選択となります。(Essential Levelは対象外です。)

Foundation Level(310,000円)
・CDPのプラットフォームを通じて回答
・報告フレームワークやガイダンスを含むCDPの一連のツールを利用可能
・CDPを通じた情報開示による(投資家及びステークホルダーとの)コミュニケーションの機会が得られる
・該当する場合、地域CDPイベントへの参加費前払い/優先登録を受けることが可能
Enhanced Level(740,000円)
・CDPのプラットフォームを通じて回答
・報告フレームワークやガイダンスを含むCDPの一連のツールを利用可能
・CDPを通じた情報開示による(投資家及びステークホルダーとの)コミュニケーションの機会が得られる
・CDPサポーターマークのロゴデータ付与
・CDPサポーターとしてCDPウェブサイトへの組織名の掲載
・企業サステナビリティレポート等へのCDPディレクターからのコメント
・CDPウェブサイトからの他社回答閲覧回数100回(通常は20回)
・CDPベンチマークレポート作成(同業他社10社との詳細な比較内容を含む)
・1社1名の人数制限があるCDPの地域イベントに2名まで参加可能、また企業名の紹介
・関連するCDP認定パートナーとの1時間の無料コンサル
・サプライチェーンにおける環境活動を把握するため、上位50社のサプライヤーを対象とした補完的なスクリーニングの実施
出典:Admin fee FAQ – CDP より弊社作成

回答の手間がかかる

CDPの各質問書へ回答を行う場合、質問項目に沿って自社状況の把握と文章化を行わなければならないため、回答をするだけでも(とくに初年度回答を行う企業においては)多くの手間と時間が必要です。 時間と労力ともにコストが高いため、開示に躊躇する企業があるのも事実ですが、現在は全プライム企業が回答対象となっているので、早めに動き出す必要があります。 

もし自社で回答の準備をするのが難しいといった場合は、コンサルティング会社を活用するのも一つの手段です。 エスプールブルードットグリーンは、CDP質問書に回答する企業様の支援を行っていますので、ぜひご相談ください。 

CDPが作成した質問書の内容

CDPは2023年度版まで、環境に関する質問を3つに区分し、それぞれで質問書を作成していました。2024年度からは、3つの質問書が1つに統合されることが公表されていますが、同様のテーマについて問われるので、ポイントを押さえておくことが重要です。それぞれ見ていきましょう。 

気候変動

気候変動質問書では、GHG(温室効果ガス)の排出量やその削減目標、気候変動によるリスクや機会など、文字通り「気候変動」に関わる事項について回答を求めています。 日本でも開示が進むTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とも整合している内容です。 

また、2022年度から生物多様性に関する質問が追加されているのは大きな変更点です。現在関心が高まっているTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の影響もあって、企業はさらなる対応を求められています。

水セキュリティ

水セキュリティ質問書では、水資源の不足や需要増加によるリスクや機会など、「水管理」に関わる事項について、回答を求めています。回答対象となるのは、製造過程などに水を多く使用する企業や、水資源に影響を与える事業を行う企業です。具体的には、食品メーカーや電力会社、化学産業、アパレル業などの企業が対象です。 

取水や排水、さらにはリサイクルしている水の量などをモニタリングしているかといった定量的な質問から水リスクに関する定性的な質問まで、様々な質問があります。 

水セキュリティのさらに詳しい解説はこちらの記事をご覧ください! 

CDP「水セキュリティ」について徹底解説!

フォレスト

フォレスト質問書では、木材、大豆、パーム油、畜牛品、天然ゴムなどの原材料を使用した商品(コモディティ)の使用が森林に与える影響など、「森林減少」に関わる事項について、回答が必要です。 森林関連のリスクに関する質問だけではなく、公的なコミットメントを実施したかどうかといった質問や農家との協業に関する質問などもあり、細かいところも問われます。 

CDPへの日本企業の取り組み状況

日本では2021年度までジャパン500選定企業がCDPの主な回答対象企業となっていましたが、2022年度からは東証プライム上場企業1,841社が回答対象企業となっています。

回答数が増加するにつれ、日本国内でAスコアを獲得する企業も増えてきており、Aスコア獲得数を国別で見ても、日本は世界トップレベルの水準となっています。

CDP気候変動レポート2022年度

2022年度は、回答対象が拡大したこともあり、プライム企業1,841社に回答要請がなされ、うち1,056社(57%)が回答しました。 2021年度に比べて回答数が3倍以上に増加しています。 そのうち、最高評価に値するAリスト企業は71社で、A-も合わせたリーダーシップレベルになると192社と、回答企業全体の約20%でした。 

CDP水セキュリティレポート2022年度

水セキュリティ質問書は369社が回答対象となり、うち261社(71%)が回答しました。 回答率でみると気候変動質問書よりも高い数値となっています。 Aリスト企業は35社で、リーダーシップレベルは85社と、回答企業全体の約23%でした。 回答率の高さやAリスト企業の多さから、日本企業の水リスクに対する姿勢は高い評価が得られています。 

CDPフォレストレポート2022年度

フォレスト質問書は272社が回答対象となり、うち87社(32%)が回答しました。 気候変動、水セキュリティの回答率と比較すると低い数値となっています。 Aリスト企業は4社で、リーダーシップレベルは10社と、回答企業全体の約11%でした。

CDPフォレスト2022 Aリスト国・地域別企業数
出典:「CDP フォレストレポート2022:日本版」を元に弊社で作成

まとめ:中小企業でもCDP質問書への回答は必要に

現在は東証プライム市場の企業、いわゆる大企業が回答対象となっていますが、今後はスタンダードやグロース、非上場企業に対してもCDPの回答要請が及ぶ可能性もあります。 そのため近い将来は、上場・非上場に関わらずCDPへの回答が求められるようになるかもしれません。 

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【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

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