「良い意味でお節介」が導いた、感動的で奇跡のようなスコア

CDP
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1936年に創業後、翌年から自動車エンジンに使われるスパークプラグ製造をスタートし、現在スパークプラグの世界No.1シェアを誇る日本特殊陶業様。省庁などでサステナビリティ対応についての講演をする機会もあるという同社ですが、CDP回答に苦労されていた時期もあったといいます。同社はそうした課題をどのように解決してきたのでしょうか。サステナビリティ戦略室の皆様にお話を伺いました。

持続可能性を見据え、ポートフォリオの変革を決意

“日本特殊陶業様の事業とサステナビリティへの取り組みについて教えてください。”

当社グループはセラミック製品を中心に事業を拡大してきた会社です。現在は、売上の約8割が内燃機関部品を取り扱う自動車関連事業で、残り2割が非内燃機関といった状況。これを2040年には内燃機関の比率を4割、非内燃機関の比率を6割とすることを目指しています。というのも、当社グループでは2021年に策定した中期経営計画の中で「変えるために、壊す。変わるために、創る。」をスローガンに掲げ、既存事業と新規事業を両輪で走らせていくことを宣言。あわせて2023年には英文社名を内燃機関部品の名前を用いていた「NGK SPARK PLUG CO., LTD.」から「Niterra Co., Ltd.」に変更しました。適切なポートフォリオ構築に向け、セラミックス技術を活かした半導体や医療機器に関連した事業、新規事業の創出に取り組んでいます。

こうした動きの背景にあるのは、事業環境の変化。我々がメインで展開している内燃機関を搭載した自動車は2030年頃までは増加していくものの、2030年代半ばには緩やかに減少に転じていくことが予想されています。現在はライフサイクル全体でのCO₂排出量に着目する考え方が広まっていたり、EVへのシフトが緩やかになっていたりすることから、内燃機関(ガソリン車)やハイブリッドの果たす役割が再注目されていますが、長い目で見たらエンジンの多様化は避けられません。これらは顧客や投資家からの見られ方、採用活動にも影響を及ぼすことから、内燃機関向け製品だけに頼らない事業ポートフォリオ構築の機運が社内で高まったのです。そんな「大きく変えていかなければならない」課題認識のもと策定された中期経営計画では、サステナビリティという単語を明確に記載しており、実行していく中でその意識はかなり高まりました。これは直近4年の大きな進捗だと感じています。

一方で当社グループは、2017年という比較的早いタイミングで初の統合報告書を発行。今後開示要請が厳しくなっていくという潮流と、東証プライム企業の開示率が上昇していた状況を踏まえ、2016年から開示の準備を始めました。とはいえ当社グループにとって初めての統合報告書でしたから、初年度から内容を充実させることは難しくて。そのためホップ・ステップ・ジャンプと3年かけて内容を充実させていく目標を立てて取り組みました。今では発行していることが当たり前となっている統合報告書に、早い段階から取り組んで良かったと感じていますし、その意義をステークホルダーも理解してくれている印象です。

日本特殊陶業様インタビュー画像1
日本特殊陶業株式会社
執行役員
グローバル戦略本部 サステナビリティ戦略室長 兼
コーポレートコミュニケーション室長
北河様

「良い意味でお節介」水セキュリティでの高スコア獲得につながった寄り添う提案

“支援企業としてエスプールブルードットグリーンを選ばれたご理由と、導入後の効果を教えてください。”

選定の理由としては、我々に寄り添ったサービスを提案していただけたことがあげられます。当社がエスプールブルードットグリーンに依頼したのは、2022年のCDP回答支援が初めて。実はそれまでは別の会社に依頼していたのです。ただ幅広くさまざまな領域への支援を得意としていた会社だったからこそ、CDPの部分では物足りなさを感じてしまって。そろそろ依頼先を考え直そうかというタイミングで、お声がけいただいたのがエスプールブルードットグリーンでした。CDP質問書の丁寧な解説や模擬採点など我々がまさに求めていたサービスで、即決したことを覚えています。

実際支援中は、CDP質問書の仕組みから教えていただいたり、「今の状況を踏まえるとこう回答するのが効果的です」とアドバイスいただいたり。こちらから要求しなくても当社の状況を踏まえた上で、良い意味でお節介なほどサポートしてもらいました。だからこそ最初に模擬採点の結果を見たときは、「今まで全然違うことを答えていたのか」という発見があって。エスプールブルードットグリーンから「こういう内容でも良いんですよ」「こういう取り組みしていませんか」と聞いていただいて初めて、「これを答えれば良いのか」ということがクリアになったのです。我々の勉強になったのはもちろん、取り組みの見直し・棚卸、回答の改善やスコアアップにもつながったと感じています。

導入後の効果としては2023年の気候変動Aスコアに加えて、水セキュリティでもA-を獲得できたことがあげられます。CDP質問書の中でも特に対応が難しいと感じていたのが、水セキュリティ。だからこそこの結果は、我々にとって感動的で奇跡のようなスコアと言えます。以前は当社グループの取り組みのどこをピックアップし、どう回答に反映すれば良いのかまったく分からず、高スコアの期待や担当者のモチベーションもない状態でした。そんな中エスプールブルードットグリーンから、当社グループが当たり前にやってきたことを回答に反映できるとアドバイスいただいて。これまでの取り組みの正当性を確認できた上、その積み重ねをCDP回答に反映できると知り、大きな自信につながりました。この自信は環境推進部門担当者のモチベーションにもつながり、チームとして以前よりもポジティブにCDP回答作成に協力してくれています。

日本特殊陶業株式会社
グローバル戦略本部 サステナビリティ戦略室 主管
大澤様

外部的な変化としては、他社の担当者や役員の方にCDPのスコアがAであることについて触れられたり、「どうしたらAスコアが取れますか?」と聞いていただいたりする機会が増えたことがあげられます。また、公益社団法人日本セラミックス協会や経済産業省中部経済産業局など、外部から講演の依頼をいただく機会も増えました。当社グループの取り組みを適切に開示した結果、色々な方から「話を聞きたい」と思っていただけるようになったのだと、前向きに捉えています。

社内意識が向上し、先進的な制度が“当たり前”に

“社内のサステナビリティ意識醸成については、どのようにお考えでしょうか。”

まず経営層においては、充分にサステナビリティの意識が根付いていると言えます。時には取締役から我々に対し「サステナビリティについて理解を深めたい」という要請が寄せられることも。またCSR・サステナビリティ委員会に代表取締役副社長の松井が入っていることも、執行役員レベルの関与度が上がっている要因の1つです。さらに先日はマテリアリティ検討に向けた合宿を役員と実施でき、意識の変化を肌で感じました。

また当社グループでは、毎週金曜日に日本語と英語で作成したサステナ通信を全グループに配信しています。毎週ニュースレターが届くため、「定期的に情報が届けられることでサステナビリティを意識するようになった」「自分のモチベーションになった」「自分の部署でやれることを考えてみた」などの声が寄せられ、現場レベルでも社員のサステナビリティ意識が向上してきていると感じます。

直近4年間は社内カーボンプライシング制度や社内環境ファンドの設立など、さまざまな取り組みを積極的に進められた時期でした。4年前社内カーボンプライシング制度の導入にあたり説明会を開いたときは、まだまだ社内の理解が少なく批判的な意見が多くありましたが、今となってはこの制度を活用することが当たり前になっています。さらに当初反対意見を持っていた部門の方が、今では「サステナビリティに対する提案を持ち込んでくる」なんてことも。サステナビリティを自分ごと化できている様子に「こんなに変わったのか」と驚きました。

日本特殊陶業株式会社
グローバル戦略本部 サステナビリティ戦略室 主任
葛葉様

とはいえ、まだまだ変わりきれていない部分があるのも事実です。中にはサステナビリティ対応は経済合理性がない、という意見を持つ社員もいます。今後取り組んでいかなければいけないことはたくさんあると思いますし、こういった積み重ねが社員の意識変化につながると考えています。

社会課題解決への貢献と経済合理性の両立を目指して

“最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。”

まず情報開示で着手していることとして、2023年9月に公表されたTNFD提言に沿った開示準備があげられます。当社グループにおいて主要な環境課題として位置づけている生物多様性。2024年1月にTNFD提言に沿った情報開示を2025年度までに実施する意思を表明しました。そのため現在、生物多様性関連のリスク・機会に関連する情報開示拡充に向け、TNFD提言で示されたLEAPアプローチに沿って環境や生物多様性に対する依存、影響、リスク、機会の評価を進めているところです。ステークホルダーの皆様からの信頼を得るためにも、今後も積極的に情報開示を行っていき、経営の透明性をより高めていきたいと考えています。

加えて我々は、気候変動や自然破壊などの社会課題の解決に資する製品・サービスを生み出していくことが使命であり存在意義であると認識し、取り組みを進めています。一方で、企業として、サステナビリティの取り組みは経済合理性との両立が必要であることも事実。その中でサステナビリティ戦略室としては10年先の未来だけでなく、より長い時間軸での提言・提案を行い、企業価値の向上を目指していきます。 

[企業紹介]
日本特殊陶業株式会社:https://www.niterragroup.com

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