1915年、石灰石原料と自社で所有する水力発電所を利用してカルシウム・カーバイドと化学肥料の生産を始めた化学メーカーである、デンカ様。創業100周年を超えた現在は、インフルエンザワクチンや最先端素材の製品をはじめ、新旧取り立ててさまざまな製品を展開しています。創業当時から再生可能エネルギーの1つである水力発電を利用してきた同社は、現在どのようにサステナビリティ対応と向き合っているのでしょうか。サステナビリティー推進部の皆さまにお話を伺いました。
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“デンカ様の事業とサステナビリティへの取り組みについて教えてください。”
当社の事業製品は大きく4つの部門に分かれております。1つ目は最先端素材の製品を取り扱う「電子・先端プロダクツ部門」、2つ目は予防診断治療領域の製品を取り扱う「ライフイノベーション部門」、3つ目は有機から無機まで幅広い技術で製造された製品を取り扱う「エラストマー・インフラソリューション部門」、4つ目はさまざまな用途で人々の暮らしを支える製品を取り扱う「ポリマーソリューション部門」です。当社は創業より水力発電を活用していますが、そのきっかけとなったのが「エラストマー・インフラソリューション部門」で取り扱っているカーバイド。カーバイドは創業当時から当社の基軸としてきた製品で、製造時には多くの電力を必要とします。元々は購入電力のみで操業していましたが、安定した電力の確保に向け、豊富な雪解け水が確保できる青梅工場にて水力発電を拡大してきたのです。
その一方、当社では2023年実績値で約175万トンのCO₂を排出してきたという事実もあります。これらのCO₂排出量のうち約半分をセメント、25%をカーバイドが占めており、脱炭素におけるリスクとなっているのです。このリスクを回避するため、セメント事業からの撤退やカーバイドを製造するプロセスの見直しを実施し、CO₂を削減してきました。
CO₂削減をはじめとした環境に関する取り組みは、もともと環境保安部が担っていたところ、2019年にサステナビリティー推進部が誕生。企業に対してESGの取り組みを求める動きが大きくなったことを受けての経営層の判断でしたが、当初はどのような業務を担うかも定まっていない状態でした。そんな中でも対応しなければならなかったのが、展示会への参加やCDP質問書への回答です。サステナビリティー推進部ではこうした専門スキルが求められる業務がとても多く、リソース不足からアウトソーシングをしないと仕事を進められない状況でした。
“支援企業としてエスプールブルードットグリーンを選ばれたご理由と、導入後の効果を教えてください。”
当初CDP回答については、個人の方の支援を受けていましたが、個人でのサポートの限界もあり、新たな支援企業を探すことに。そのような中、出会ったのがエスプールブルードットグリーンでした。サポートをお願いした決め手としては、支援企業数や同業他社の支援実績、CDP回答支援の担当年数、そして当時CDPのスコアリングパートナーであったことなど「CDP回答支援を主体とした経験値の高さ」があげられます。加えて業界内での知名度や評判、支援サービスの費用対効果、親会社を含めた経営規模やマンパワーなども申し分なく、支援企業として選定いたしました。実際支援中は、こちらからの質問に対して、すぐに電話やメールで回答していただけるので非常に助かりました。
また、サービス導入後の成果として、「CDPにどのように回答するのか、集中できるようになった点」があげられます。回答文章案の作成や表現方法などをエスプールブルードットグリーンに一任することで、当社は「何を回答できるか」に注力することが可能になりました。スコアアップの一助となっていると感じています。
そして「各部署を超えたデータ収集がしやすくなった」という内的な変化も。というのも以前は各部署に対し「CDPのこういう質問に回答するための情報がほしい」と曖昧な依頼していたことから、各部署もどんなデータを提出すべきか分からず、適切な情報が収集できないハードルの高さを感じていました。ただエスプールブルードットグリーンの支援では、コンサルタントより「この質問は○○について聞いている」とポイントを絞って示してもらえます。その結果、質問の意図を踏まえた上で各部署に相談することができ、回答に必要なデータをよりスムーズに得ることが可能になったのです。この社内コミュニケーションの変化は、直近3年で対応してきて大きく変わったと感じるところです。社内のコミュニケーションが円滑になったことで情報を得るためのハードルが下がり、よりCDP回答への対応がスムーズに実施できる基盤が築かれたと感じています。
外的な変化についてはスコア発表前のため何とも言えませんが(取材は2024年11月)、エスプールブルードットグリーンによる模擬採点では、CDPスコアが上がる予定なので今後社外から評価していただけるだろうと考えています。また生物多様性やCDPフォレストについてもサポートいただく予定なので、早めに着手していくことでさらなる価値向上に繋げていくつもりです。
“社内のサステナビリティ意識醸成については、どのようにお考えでしょうか。”
最近はCDP回答について取引先のアンケートで聞かれることが多いからか、経営陣も結果を気にしている印象です。もちろんCDPスコアが上がれば、会社全体として評価してくれる風土もあるため、我々もモチベーション高く取り組めています。また回答に必要なデータ提供に協力してくれた部署からは、「CDPの結果どうだった?」と声がかかることも。今は一部の部署だけですが、こうした空気が全社に広がっていくことが理想だと感じています。
現在当社では、CDPを始めとしたサステナビリティの動きに関して、経営陣を含め「いかにポジティブに考えるか」という流れになりつつある状況です。そのためポートフォリオの改革など、すでに進んでいる取り組みもありますが、社員一人ひとりの認知度やリテラシー、サステナビリティと財務を結びつける力はまだまだ低いと感じています。サステナビリティ対応をより外部環境に強い経営基盤を構築するためのアプローチと捉え実行していくには、全社員が自分ごととして業務に落とし込むことが必要です。まずは全社員にサステナビリティを意識させ、頭の片隅においてもらうために、我々としては周知活動や基礎教育を根気強く実施し続けなければならないと感じています。そして最終的には、自分ごととしてサステナビリティ対応を咀嚼し、実行できる人材を育てあげるのが理想です。
“最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。”
現在当社が目指しているのは、ESGスコアの向上です。これまでも我々は多くのサステナビリティ情報を開示してきましたが、開示自体が目的になってしまっていたことが課題でした。そこで今後はまずESGスコアの向上を目的とし、それを達成するための手段として情報開示に取り組み、その効果を最大化させたいと考えています。
情報開示の中でも特に力を入れたいのは、年々注目度が上がっている生物多様性に関する開示。エスプールブルードットグリーンにもサポートいただくため、データの分析や見せ方など力を借りながら2023年9月に公開されたTNFDの最終提言v1.0に沿った開示を進めていく予定です。
手段としての情報開示により、最終的に我々が叶えたいのは「情報開示のもとESG投資を呼び込むという理想の姿の実現」や「自社によるカーボンニュートラル対応の妥当性評価の実施」。情報開示を経営の中にしっかり落とし込み、PDCAを回すことで「CO₂排出量:13年度⽐60%削減」や「再生可能エネルギー発電の最大出力:150MW」といった当社Mission2030の目標を確実に達成していきたいと考えています。
[企業紹介]
デンカ株式会社:https://www.denka.co.jp/