環境配慮型宿泊施設の新たなスタンダード 「グリーンキー認証」の取得メリットと取得方法とは?

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環境配慮型宿泊施設の新たなスタンダード 「グリーンキー認証」の取得メリットと取得方法とは?

近年、観光業界においても少しずつ温暖化対策やSDGsへの取り組みへの意識が浸透してきています。世界各地の宿泊施設では、20年ほど前から設備や運営においても環境配慮に目を向け、サステナビリティ経営を目指す動きが広がってきており、その認証制度としてグリーンキー認証取得制度が開始しました。

本コラムでは、グリーンキーの概要や歴史、取得プロセスの提示や国内取得事例など、わかりやすくご紹介していきます。

グリーンキー認証とは

グリーンキー認証とは、さまざまな規模の宿泊施設の環境方針や運営が、国際環境教育基金(*1) によって定められた厳しい基準に沿っているか評価し確認する、宿泊施設向けの国際エコラベルのこと。最新の基準である2022年版は、世界持続可能観光協議会(GSTC)が定めた観光事業者向け基準(GSTC-i)に準拠していることが認められています。

なおグリーンキー認証の取得後も定期的に再審査を受け、取り組みの維持や改善を求められます。施設運営者にとって、持続可能な経営を実現するための指針ともいえるでしょう。グリーンキー認証は2024年1月時点で、60を超える国において5,000以上の施設が取得しており、この数字は増え続けています。

(*1) 国際環境教育基金(The Foundation for Environmental Education : FEE)とは、環境教育プログラムを通じて持続可能な発展を目指すデンマークに本部を置く国際団体のこと。世界最大規模の環境NPO / NGOの1つ。

グリーンキー認証の歴史

ではグリーンキー認証は、どのような背景で設立されていったのでしょうか。

グリーンキー認証は30年前から存在しており、デンマークの国家的な取り組みから世界の宿泊施設向けの国際エコラベルへと発展していきました。日本でも2009年にグリーンキー取得制度が開始し、持続可能な観光を推進するために2024年10月時点で国内6施設がこの認証を取得しています。具体的なタイムラインは下記のとおりです。

グリーンキー認証の歴史
出典:グリーンキーエコラベル. 一般社団法人JARTA. を基に弊社作成

「サクラクオリティAn ESG Practice」との違い

グリーンキー認証以外にも、日本には世界持続可能観光協議会(GSTC)により承認されている観光品質認証制度がもう一つ存在します。それは「サクラクオリティAn ESG Practice」と呼ばれる認証制度です。どういった認証制度なのかを具体的に見ていく前に、そもそもサクラクオリティとは一体何なのか整理しましょう。

まずはサクラクオリティについてです。サクラクオリティとは、日本のホテルや旅館などの宿泊施設を中心とした観光品質認証制度のこと。日本の観光業界全体の品質向上を目指す認証で、「安全性」「安心性」「誠実」を基にサービスや地域貢献などが評価の対象となります。また、申請された宿泊施設の観光サービスの品質を第三者が評価し、その品質の高さを全9段階に分けて認証するという仕組みになっています。

2009年より実証実験、2018年より一般社団法人観光品質認証協会によってプロジェクトがスタートしました。フェーズⅠで約300項目、フェーズⅡで2,000項目の調査が審査員によって実施されます。

一方「サクラクオリティAn ESG Practice」は、サクラクオリティを取得した宿泊施設を対象としたSDGs認証マークのことを指します。グリーンキー認証と同様、GSTCからの基準の認証を受けており、SDGsの17ゴールを172項目の基準に分けて整理されている制度です。なお独立かつ中立的な第三者委員会による認証プロセスを経て、SDGsに対する日本独自の対応を徹底している施設に対して認証マークが授与されます。

サクラクオリティAn ESG Practiceでは、通常のサクラクオリティ認証マークとは異なり、全5段階での評価であり、緑色のサクラが認証マークとなっております。

サクラクオリティAn ESG Practice評価カテゴリー
出典:サクラクオリティとは. Go! Central Japan. より引用

では「サクラクオリティAn ESG Practice」とグリーンキー認証では、どこに違いが見られるのでしょうか。違いは大きく2つあります。

  • 認証地域の範囲

先述のとおり、グリーンキー認証は世界中の施設を対象としています。一方「サクラクオリティAn ESG Practice」は、あくまで日本国内の施設を対象としている認証制度です。

  • 焦点

グリーンキー認証は主に環境保護に特化した認証で、エネルギーや水の使用削減、廃棄物管理、環境保護活動など、エコツーリズムに関する取り組みが評価されます。世界規模で認知されており、主に環境面における持続可能性の実現を目指しています。

一方「サクラクオリティAn ESG Practice」はSDGsに基づく認証で、施設が環境、社会、ガバナンス(ESG)の取り組みを通じて、SDGsにどれだけ貢献しているかが評価の軸に。日本国内の宿泊施設向けに、特に日本的なSDGs対応を徹底的に実施している施設に授与される認証です。

どちらもGSTCによって承認されている観光品質認証制度であり、持続可能な観光業を支援するという共通の目標がある一方で、それぞれの認証地域の範囲や焦点の違いから、評価軸や項目などに大きな違いもあります。観光品質認証制度を検討される場合は、自社が焦点を当てていきたい項目と照らし合わせ、検討を進めていくことが大切です。

グリーンキー認証とサクラクオリティAn ESG Practiceの違いや共通点
出典:サクラクオリティとは. Go! Central Japan. / WITH A SMILE ON YOUR JOURNEY. SAKURA QUALITY. を基に弊社作成

取得メリット

ではグリーンキー認証を取得することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは大きく3つの視点からご紹介していきたいと思います。

  • ブランドイメージ向上

グリーンキー認証は国際的に認められたエコラベルです。取得するためには、国際的に定められた環境をはじめ、あらゆる持続可能性に関する基準事項を満たし、定期的に第三者審査委員会による評価を受けている必要があります。国際的な基準に沿ったグリーンキー認証を取得することだけでなく、定期的な評価を受ける必要もあることから、企業の社会的責任(CSR)を果たしていることが証明され、ブランドイメージを向上させることが可能です。

  • お客様にPRするためのツールとして活用

サステナビリティというチャネルを活用することで、環境意識の高い消費者に対して、エコロジカルな取り組みをアピールできます。特に、エコツーリズムや持続可能な旅行を重視する旅行者に対して信頼性を提供することが可能です。サステナブルツーリズムが主流となりつつあるヨーロッパではすでに、グリーンキー認証が宿泊施設などを選ぶ基準の一つとして活用されています。お客様へのわかりやすいアピールのツールだといえるでしょう。

  • 最新の環境対策に取り組んでいる証明

グリーンキー認証は、その施設の環境配慮への「質」と、組織として継続的に環境などへの対策に取り組んでいる「マネージメント」の2つの軸で審査されます。形式上での環境配慮に対する取り組みだけでの取得・継続は困難である一方、このグリーンキー認証を取得するプロセスが有効な環境対策となる仕組みになっています。

申請基準

取得するメリットは多いものの、実際に取得するのが難しいといわれているグリーンキー認証。具体的にはどのような基準が定められているのでしょうか。

全施設共通 13カテゴリー
出典:Unlocking sustainability in the hospitality industry. Green Key. より引用

グリーンキー認証の申請基準は、対象となる6種類の全施設共通で13のカテゴリーが存在します。

■全施設共通 13カテゴリー

  • スタッフの意識について
  • 環境マネジメントについて
  • ゲストへの周知・情報提供について
  • 水資源について
  • エネルギー資源について
  • 環境に配慮したクリーニング・洗濯
  • 環境と地域に配慮した食べ物・飲み物
  • ごみの分別やコンポスティング
  • 組織の運営体制について
  • 施設内の宿泊環境について
  • グリーンエリアの有無
  • グリーンアクティビティの有無
  • CSR(企業の社会的責任)について

なお、全施設共通のカテゴリーはありますが、評価項目は6種類の施設ごとに異なります。現地調査では、13のカテゴリーに分かれた130項目の基準を監査役によって定量的に評価され、80項目以上基準をクリアしていることが求められます。施設ごとの基準やその解説についてご確認になりたい場合は、一般社団法人JARTAがHP上で公開しているグリーンキー基準をご確認ください。

取得までのプロセス

では実際にグリーンキー認証を取得するためには、どのようなプロセスが必要になってくるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

①申請書類の提出

まず、公式サイトより申請書を取得し、施設が実施しているサステナビリティに関する取り組み状況や今後の改善案といった必要事項を記載し、審査書類を一般社団法人JARTAの窓口に送付します。グリーンキー認証は、世界40か国に専用窓口を設置しておりますが、日本では一般社団法人JARTAが国内のグリーンキー認証にかかわる窓口業務を行っております。

②現地調査

1年目(認定証を受け取る前)と2年目は、年1回現地調査が実施される予定です。1~2年目の現地調査では、書類確認と申請内容の目視検証が行われ、その後の現地調査は3年に一度、書類確認は毎年継続して実施されます。なお現地調査では、先ほどご紹介した13の共通評価項目の取り組み状況を定量的に評価され、施設内のエネルギー使用状況や廃棄物管理など、各基準が適切に実施されているかどうかが確認されます。

③第三者検証による判定

現地調査で基準を満たしていると判断された場合、施設から提出された申請書と現地調査のレポートはグリーンキー本部に送付される予定です。なお、最終的な判定はグリーンキー本部ではなく、公正を期すため、独立した第三者機関(独立監査役や審査員)によって行われます。そして第三者機関による判定をクリアしたのち、盾と認定証が授与されます。ちなみに認証の有効期限は1年間であるため、継続的な認証を希望する場合は更新手続きが必須です。

グリーンキー認証取得までのプロセス
出典:Catering to you and the environment. Green Key. を基に弊社作成

取得した施設の事例

グリーンキー認証を取得するためには、厳しい基準をクリアしていなければいけないことがわかりました。ではどのような施設が、グリーンキー認証を取得しているのでしょうか。今回は国内でグリーンキー認証を初めて取得した施設と、最近取得した施設をご紹介いたします。

①扉温泉明神館

扉温泉明神館は、日本でグリーンキーラベル取得制度が始まった2009年に、グリーンキー認証を国内で初めて取得した長野県の温泉宿泊施設です。環境に優しい温泉旅館として、無農薬野菜の使用やエネルギー効率の良い設備、節水設備を導入し、温泉水の再利用や再生可能エネルギーの導入などの取り組みを行っています。地域資源を活用し、地元産品を取り入れた料理の提供や、廃棄物のリサイクルにも力を入れています。

②シェラトン鹿児島

シェラトン鹿児島は、グリーンキー認証を取得した既存の国内認定施設の中で最初のシティホテルとして注目されました。環境負荷軽減に積極的に取り組んでおり、省エネ設備の導入や、スタッフによる環境教育、リサイクルプログラム強化、エコツーリズムをテーマにした旅行プランの提供など、多岐にわたる環境保護活動を実施しています。また、施設内の食品ロス削減にも取り組んでおり、持続可能な運営を目指しています。

まとめ

グリーンキー認証は環境に優しい運営を実現するための重要な手段であり、宿泊施設にとっては、環境負荷の軽減やコスト削減、消費者への信頼性向上などさまざまなメリットがあることがわかりました。また、グリーンキー認証を取得することで、持続可能な観光の推進にも繋がり、地域や地球全体に貢献することができます。国内でも少しずつ取り組み事例が増えてきているグリーンキー認証。今後の動向も注目していきましょう。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

【出典】

グリーンキーエコラベル. 一般社団法人JARTA. (参照2024.11.27)

グリーンキーの基準と註釈ホテル(16部屋以上の宿泊施設)2022年1⽉1⽇〜2025年12⽉31⽇. 一般社団法人JARTA.  (参照2024.11.27)

「シェラトン鹿児島」がグリーンキーエコラベル取得. 一般社団法人JARTA. (参照2024.11.27)

Our History. Green Key. (参照2024.11.27)

Green Key Criteria. Green Key. (参照2024.11.27)

Application Process. Green Key. (参照2024.11.27)

サクラクオリティとは. Go! Central Japan. (参照2024.11.27)

持続可能な観光にかかる旅行商品の造成に向けた ラベルインデックスのとりまとめ. 国土交通省. (参照2024.11.27)

エコロジーからサスティナブルへ。地域の自然・文化・暮らしを守る、扉グループの「地域共創のまちづくり」. 環境省. (参照2024.11.27)

Message. 明神館. (参照2024.11.27)

WITH A SMILE ON YOUR JOURNEY. SAKURA QUALITY. (参照2024.11.27)

宿泊施設品質認証制度「サクラクオリティ」. SAKURA QUALITY. (参照2024.11.27)

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