世界で喫緊の課題となっている社会問題や環境問題に対する企業の対応の重要性が認識されている中、グローバルコンパクトが重要な役割を担っています。
グローバルコンパクトとは、SDGsの達成と持続可能な社会の構築に向けて企業が取り組むべき原則を示しています。それに賛同する世界各国の企業が署名し、健全なグローバル社会の構築に向けて活動を行っているのが国連グローバルコンパクトです。
この記事では、グローバルコンパクトの概要と、企業が参加するメリットについて解説していきます。
目次 Index
1990年代、急速なグローバル化による負の影響(人権問題や環境問題など)が顕著になり、国家や国際機関だけではグローバルな課題を解決できない状況にありました。
そのような状況の中、1999年1月に開催された世界経済フォーラムにて、当時の国連事務総長であったコフィー・アナン氏が企業に対しグローバル課題解決への参画を求め、2000年に国連グローバルコンパクト(UNGC)が正式に発足しました。
国連グローバルコンパクトには世界約160カ国、17,500を超える企業・団体が署名し、日本におけるカントリー・ネットワークの役割を果たすグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)には2024年10月22日時点で637もの企業・団体が加盟しています。
SDGsとは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標であり、17のゴール・169のターゲットから構成されています。
SDGsとグローバルコンパクトの関連性は非常に強く、国連グローバルコンパクトが掲げる人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わる10の原則に企業が賛同し、取り組みを推進していくことで、SDGsの達成に寄与するのです。
国連グローバルコンパクトが定める4分野/10原則は、企業が取り組むべき内容として、国際社会で求められているものです。
国連グローバルコンパクトに署名する会員は、10原則に賛同し、企業・団体のトップ自らのコミットメントのもと、その実現に向けて努力を継続することが求められています。
企業・団体に求められている4分野/10原則の内容を、分野ごとに解説していきます。
人権原則は、1948年に採択された「世界人権宣言」をその由来としており、人権の保護を支持・尊重し、事業活動によって生じてしまう可能性がある人権侵害を回避することが求められています。
世界人権宣言で述べられている「平等」「生命と安全」「個人の自由」「経済的、社会的、文化的自由」に焦点を当て、これらを保障することで、個人の権利と自由を擁護できます。
労働原則は、1998年に採択された「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」をその由来としており、従業員による団体交渉の承認や強制労働の撤廃、児童労働の廃止、従業員に対する差別の撤廃が求められています。
経済発展の度合いや文化的価値観に関わらず、3つの原則を尊重、推進、実現する義務を負い、全社レベルで適用する必要があります。
環境原則は、1992年に採択された「環境と開発に関するリオ宣言」と「国際アクションプラン(アジェンダ21)」をその由来としており、環境リスクに対する予防策の実施や環境責任の促進、環境保護に寄与する技術の開発と普及が求められています。
アジェンダ21で示されているよりクリーンな生産過程や、責任ある企業家精神を持つことが、持続可能な開発の実現につながります。
腐敗防止原則では、倫理的価値観と誠実性に基づいた企業の内部統制が求められており、2004年に国連グローバルコンパクト署名企業の協議の末、10番目の原則として加わりました。
不健全な内部統制は、権力と地位の乱用につながり、貧困に苦しむ人々や恵まれない人々に不当な影響を及ぼしてしまうため、腐敗根絶に取り組む責任を民間も共に負うという狙いがあります。
国連グローバルコンパクトに署名することで、サステナビリティ経営を推進する企業にとって考えられるメリットは以下の2点です。
それぞれ見ていきましょう。
SDGsなどの社会課題に真摯に取り組む姿勢を発信することにより、消費者および投資家からの信頼が向上し、企業価値の向上につながります。
企業の評価が上がり、消費者からの信頼が向上することで、サステナビリティへの関心が高まってきている市場において優位性を発揮できると考えられます。
また、投資家からの信頼の向上は、資金調達機会の拡大に寄与するため、社会課題へ積極的に取り組むことは事業運営を行う中で重要な要素となるでしょう。
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)に加盟し会員になることで、GCNJが開催するサステナビリティ経営に関するセミナーや勉強会に無料で参加できます。
また、分科会活動も実施されており、基礎的知識や最新情報を取得し会員企業の課題解決に結びつけることが可能です。
2024年10月22日時点で、GCNJへの加盟企業・団体は637にものぼります。
業種別でみると、製造業やサービス業の企業が多く加盟しています。以下は一部抜粋です。
プライム市場に上場している大企業だけではなく、中小企業や教育機関も加盟し、より一層持続可能な成長に向けた取り組みが推進されています。
持続可能な社会の構築に向けて、企業が人権・働きがい・ジェンダー平等推進・気候変動対策などに取り組む重要性が高まっている中、グローバルコンパクトがより一層注目を集めています。
社会課題や環境課題の解決や企業価値の向上につながるグローバルコンパクトの原則にコミットメントし、国連グローバルコンパクトへの署名を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社は環境経営におけるパートナーとして、CDPやTCFDなど各枠組みに沿った情報開示や、GHG排出量の算定のご支援をさせていただいております。『専門知識がなく何から始めれば良いか分からない』『対応をしたいけれど、人手が足りない…』といったお悩みを持つ方がいらっしゃいましたら、弊社にお声がけいただけますと幸いです。
CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。
<出典>
・国連グローバル・コンパクト 4分野10原則の解説.Global Compact Network Japan.(2024年11月参照)
・署名・加入をご検討の方へ. Global Compact Network Japan.(2024年11月参照)
・加入企業・団体一覧. Global Compact Network Japan. (2024年11月参照)