自社の建物で環境への配慮をアピールできる!?CASBEE認証について解説!

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自社の建物で環境への配慮をアピールできる!?CASBEE認証について解説!

昨今、建築業界では、環境に配慮した取り組みが求められています。

建築業界で施工時や解体時等で多くのCO₂が排出されており、2022年度は建築業から排出される CO₂は21.7%(全体の約4分の1)を占めていると、環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課が報告しました。

そのような背景もあり、建築業界においては環境に配慮する取り組みの1つとして、建築物を環境性能で評価し格付けする手法であるCASBEEが注目されています。

今回は、CASBEE認証について解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください!

CASBEEとは

CASBEE(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency)は、「建築環境総合性能評価システム」と訳されるものです。省エネや環境負荷の少ない資機材の使用等の環境配慮や、室内の快適性、景観への配慮等を含めた建物の品質を総合的に評価するシステムのことを指しています。

CASBEEは、建築物における環境への様々な側面を客観的に評価することを目的とし、以下の3つの理念に基づいて、構築されています。

  • 建築物のライフサイクルを通じた評価ができること
  • 「建築物の環境品質(Q)」と「建築物の環境負荷(L)」の両側面から評価できること
  • 「環境効率」の考え方を用いて、新たに開発された評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価できること

CASBEEの種類

CASBEEの認証制度は、主に5つの種別に分けることができます。

具体的には、

  • CASBEE建築評価認証
  • CASBEE戸建評価認証
  • CASBEE不動産評価認証
  • CASBEEウェルネスオフィス評価認証
  • CASBEE街区評価認証

があげられます。

代表的な3つの認証(オレンジ色で示したCASBEE建築評価認証、CASBEE不動産評価認証、CASBEEウェルネスオフィス評価認証)においては、詳細を後述します。

CASBEE建築

CASBEE建築の対象物は、戸建住宅を除く延べ面積300㎡以上の建築物です。この背景には、現行の建築物省エネ法で、中・大規模(300㎡以上)の非住宅の新築、増改築を行う建築主に対して省エネ基準への適合義務を課すと定めていることが、関連していると考えられます。

また、評価方法としては、Q(建築物の環境品質)及びL(建築物の環境負荷低減性)の得点を基に、「Q(建築物の環境品質・性能)÷L(建築物の環境負荷低減性)」という式によりBEE (建築物の環境性能効率)を算出し、5段階評価で表します。

「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変よい)」、「B+ランク(良い)」、「B-ランク(やや劣る)」、「Cランク(劣る)」と定義されており、良いスコアを取るためには、Q(建築物の環境品質)を上げ、L(建築物の環境負荷低減性)を低くすることが重要です。

CASBEE不動産

CASBEE不動産の対象物は、竣工1年以上の既存建築物です。竣工1年以上と定められる背景としては、評価に1年以上の運用実績データが必要になるためです。また、不動産マーケット関係者(投資家、不動産会社、ビルオーナー等の方)が簡略的に評価することを目的として実施されています。

CASBEE不動産の特徴としては、他のCASBEE認証に比べて取得にかかる時間が少ないことや、CASBEE不動産の取得により、グリーンビル認証*という別の認証でも評価されることなどが挙げられます。 CASBEE不動産では、5分野、約20項目に分かれており、その中で必須項目となっているものを全て記載することでBランクが与えられることがポイントです。

必須項目に回答するのは、もちろんのこと、各項目で用意された加点評価項目というものも回答していくことで、Bランク以上のスコアも見込めます。

CASBEE不動産認証により、環境に配慮した不動産が増えることが期待されます。

不動産セクターの会社・ファンド単位での環境・社会・ガバナンス(ESG)配慮を測り、投資先の選定や投資先との対話に用いるためのツール

CASBEEウェルネスオフィス

CASBEEウェルネスオフィスの対象物は、オフィスビルです。主に建物で働く人の健康や生産的に働くための環境性能を評価します。

評価対象となる主な建築物は事務所となっており、複合用途ビルの場合は事務所用途の部分を対象に評価するケースが多いです。CASBEEウェルネスオフィスは、5つの大項目である、健康性・快適性、利便性向上、安全・安心性、運営管理、プログラム(メンタルヘルス対策など)からなり、5つの大項目の下に各評価要素、評価項目があります。評価項目ごとに採点基準が定められており、5段階(S,A,B+,B-,C)で評価されます。

健康に配慮した設計をすることで、従業員の集中力の向上に繋がることも重要なポイントです。

CASBEEの評価ポイント

CASBEEの評価ポイントとしては、環境品質(Q)(=室内環境やサービス性能、室外環境)の値が大きく、環境負荷(L)(=エネルギーや資源・マテリアル、敷地外環境)の値が小さいほどランクが上がるため(図2:水色の枠参照)、それらを意識することが重要だと言えます。また、CASBEEの専門家に協力してもらい、記載できるものを増やすのも大切です。

加えて、CASBEEでSランクを取得した企業では、健康経営やクリーンな生産を支える排水処理技術、ワークエリアに緑を多く配置し、耐震性能・制震性能に考慮しているなどのことが評価されていました。CASBEEが事前に設定している項目をより具体的にかつ独自性をもって取り組んでいる企業が評価される傾向にあるようです。

評価結果表示シート(CASBEE-建築(新築)の場合)
出典:「評価方法と結果の表示」一般社団法人日本サスティナブル建築協会より引用

CASBEE認証を取得するメリット

CASBEE認証を取得するためには、CASBEEが求める要項を満たすのはもちろんのこと、書類の提出等もあり、時間やコストがかかります。

しかし、CASBEE認証を取ることで、環境配慮に積極的な企業であることを示すのと同時に、不動産価格が上昇することも予想できるため、CASBEE認証を取得する重要性が高いです。以下に具体的なメリットについて記載しました。

環境配慮に積極的な企業であることを公開できる

1つ目のメリットとしては、環境配慮に積極的な企業であることをステークホルダー等に示せることが挙げられます。例えば、建物所有者は保有する物件が環境性能や快適性に優れたものであることを株主や投資家にアピールすることができます。さらに、AランクやSランクを取得できると、企業価値向上にも繋がるため、高スコアを取る重要性は高いです。

不動産価格の上昇

2つ目のメリットとしては、不動産価格の上昇が見込めるということが挙げられます。

CASBEE認証によって環境性能が高いと評価された建築物は、市場においても高い評価を受ける傾向にあることがポイントです。環境性能の高い建築物において、高効率の設備等を用いることで、エネルギーコスト削減や長期的な維持管理コストの削減に繋がる可能性があります。それによって、建物全体のランニングコストの削減等にも効果があると言えます。CASBEE認証は、企業のブランドイメージ向上にとどまらず、不動産の経済的価値を高める重要な認証であるため、取得を検討するのが大切です。

CASBEE認証の取得にかかる費用

前のセクションでは、CASBEEの特徴や種類について記載しました。ここでは、CASBEE認証を取得する際に、どれくらいの費用がかかるのかを説明します。

前提として、費用は種類ごとに異なるということがポイントです。今回は代表的なCASBEE建築・CASBEEウェルネスオフィス・CASBEE不動産・CASBEE自治体の4種類について、費用イメージと費用が決まる背景について記載しました(図)。

4種類のうち、CASBEE建築の費用が最も高く、次にCASBEEウェルネスオフィス、CASBEE不動産、CASBEE自治体と続きます。

評価項目の量や手間などがあると、費用は高くなる傾向がありますので、それぞれの会社でどのCASBEE認証を取得するのが良いかを決めた上で、認証の手順に進むのが望ましいです。

(図)CASBEEの種類ごとの費用イメージ

CASBEE認証取得の流れ

CASBEE認証の流れとしては、CASBEE認証の取得をサポートする企業によって定義が少し異なるため、注意が必要です。

今回は、株式会社 東京建築検査機構が実際に行っている手順を参考にします。株式会社 東京建築検査機構では、①事前相談、②申請受付、③審査業務料金の支払い、④審査、⑤評価認証書の交付、⑥評価認証の公表(②申請受付から⑥評価認証の公表までには、およそ2-3ヶ月かかります)、⑦ 申請の取り下げという流れでCASBEE認証をサポートしています。

CASBEE評価認証業務の流れ
出典:「CASBEE評価認証業務の流れ」株式会社 東京建築検査機構を基に弊社作成 

②の申請受付においては、申請図書(正本1部、副本1部)を提出する必要があり、⑦の申請取り下げにおいては、申請者は評価認証交付前であれば「取り下げ届」を提出することにより申請を取り下げることも可能であるという点を留意することが大切だといえます。

まとめ

CASBEEは、建築物の持続可能性を環境性能で評価する手法です。建築物から多くのCO₂や廃材が排出されるなど、建築業界における環境問題が注目されています。そのことから、CASBEE認証により影響を低減することが求められています。

CASBEE認証を取得するためには、手間やコストがかかりますが、環境に配慮している企業であるというブランドイメージや、不動産の市場価値が上がるなど長期的なメリットも多いです。CASBEEにも色々な種類があるため、自社に合ったものを選び、専門家やコンサルタント等と協力して取り組むことも可能です。今後CASBEE認証の取得を検討にする企業が多いのではないかと予想できます。持続可能な建築物を広げていきましょう。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

<出典>

CASBEEウェルネスオフィスの評価項目や採点基準を、わかりやすく解説!. 環境・省エネルギー計算センター. (参照2024.11.5) 

CASBEEの概要.一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター. (参照2024.11.5) 

令和5年度事業 特別管理産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値. 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課. (参照2024.11.5) 

【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について.国土交通省.(参照2024.11.5) 

CASBEE不動産とは?評価のプロがわかりやすく解説! .建築設計ナビ. (参照2024.11.5) 

鉃鋼ビル以上の鉃鋼ビルへ環境にやさしいビルプロジェクト.株式会社鉃鋼ビルディング. (参照2024.11.5) 

CASBEEとは?環境に配慮した建築物を評価する基準. しろくま省エネセンター株式会社.(参照2024.11.5) 

GRESBとは. Green Building Japan . (参照2024.11.5) 

CASBEEとは?主な評価ツールの種類や届出と認証の違いを分かりやすく解説!.環境・省エネルギー計算センター. (参照2024.11.5) 

CASBEE評価認証.一般財団法人日本建築センター. (参照2024.11.5) 

CASBEEの費用はいくら?CASBEE代行でかかる費用の考え方について徹底解説.環境・省エネルギー計算センター. (参照2024.11.5) 

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