VPP(仮想発電所)とは?仕組みや取り組み事例を分かりやすく解説!

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VPP(仮想発電所)とは?仕組みや取り組み事例を分かりやすく解説!

VPP(仮想発電所)とは?

VPP(仮想発電所)とは、企業や家庭などが所有する分散したエネルギーリソースをつなぎ合わせることで、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組みのことです。自家発電設備や蓄電設備、EVなどのエネルギーリソースをIoT(モノのインターネット)技術を用いて相互につなぎ合わせることで、電力の需給バランスを調整することができます。

VPPが注目されるきっかけとなったのは、東日本大震災です。2011年に、東日本大震災に伴い原子力発電所が停止し電力需給がひっ迫しました。また近年脱炭素の流れが強まっているため、需要に合わせた大規模な発電所の電力供給に依存するだけではなく、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が重要視されています。しかし、これらの再生可能エネルギーは天候に応じて発電量が左右されるため、供給量を安定させることができません。

こうした背景から、電力を供給する側だけでなく、太陽光パネルや蓄電設備などの、需要家が導入したエネルギーリソースを活用するVPPが注目されています。

VPPの仕組み

VPPでは、分散したエネルギーリソースをつなぎ合わせる(アグリゲーション)ことで、エネルギーリソースの管理・制御を行います。この際、管理・制御を一括で行うのがアグリゲーターです。アグリゲーターは需要家の電力需要に合わせて、電力の放電、抑制を行う役割を担っています。

例えば需要家の電力使用が多すぎる時には、空調設備などの運転を抑制したり、蓄電設備からの放電を促し発電すべき電力量を削減したりして電力需要を減少。逆に電力使用が少なく電力が余っている時には、空調設備などを稼働したり、蓄電設備の充電を促したりします。この電力需給の管理をする方法として、デマンドレスポンス(DR)を活用しています。

VPPの仕組み

出典: VPP・DRとは. (2023, August 16). 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)を基に弊社作成

VPPアグリゲーターの種類

エネルギーリソースの管理・制御を一括で行うアグリゲーター。その中でも、アグリゲーターは対応している部分によってリソースアグリゲーター、アグリゲーションコーディネーターという二種類に分けることができます。リソースアグリゲーターは需要家と直接契約し、需要家の設備の電力量を管理・制御する事業者です。一方アグリゲーションコーディネーターは、リソースアグリゲーターが管理・制御した電力量を束ね、電力供給事業者と直接取引を行う事業者を指します。

VPPアグリゲーターの種類

出典: VPP・DRとは. (2023, August 16). 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)を基に弊社作成

 デマンドレスポンス(DR)とは?その役割と効果

デマンドレスポンス(DR)とは、需要家側のエネルギーリソースの管理者がそのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることです。デマンドレスポンス(DR)には二種類あり、需要を減らす(抑制する)「下げDR」と、需要を増やす(創出する)「上げDR」に分けられます。

具体的には、空調設備などの運転の抑制や蓄電設備からの放電を促すことが下げDRに当たり、逆に空調設備などの稼働や蓄電設備の充電を促すことが上げDRに当たります。また令和5年に省エネ法が改正され、一定規模以上の事業者は「下げDR」、「上げDR」の実績報告を行うことが新たに求められるようになりました。

デマンドレスポンスの仕組み

出典: VPP・DRとは. (2023, August 16). 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)を基に弊社作成

VPPのメリット

電力の需給バランスを調整することができるVPPには、大きく分けて2つのメリットがあります。

・再生可能エネルギーの導入拡大 

・発電・設備コストの削減

それぞれ見ていきましょう。

再生可能エネルギーの導入拡大

VPPには、より多くの再生可能エネルギーの導入を拡大できるといったメリットがあります。

再生可能エネルギーは脱炭素に貢献することができるため、近年自治体や企業を中心に導入が進んでいます。しかし天候に応じて発電量が左右されるため供給量が安定せず、一日の発電量が需要量を上回ったり下回ったりするといった課題があるのが現状です。ただしVPPにより蓄電池やEVなどの需要家側のエネルギーリソースを制御して、需要をコントロールすることができれば発電した電力を有効に活用することが可能となります。

発電・設備コストの削減

VPPには、発電・設備コストを削減できるというメリットがあります。

電力需要のピークは夏の一定期間ですが、年間で見るとわずかな期間です。しかしこのピークの期間の需要に対応できるように発電設備は維持・管理されています。そのためVPPによって需要を抑制できるようになれば、発電設備の設備投資や管理費を削減することが可能です。またピークの期間では燃料費の高い電源を追加で使用し、発電して需要を満たしている場合が多いため、需要を抑制することによって発電コストの削減も可能となります。

VPP事業の事例

国内において、エネルギーリソースを活用できるVPP事業はかなり大きな市場となっています。日本におけるVPPとDR支援の全体市場は、2022年度で42億円だったのに対し、2023年度は89億円で対前年比208%、2024年度の予測は168億円で対前年比188%と、急激な拡大を見せています。また東北電力株式会社は、ドイツのVPP事業者であるネクストクラフトベルケ社とVPP実証に関する基本協定を締結し、実証において連携。実証内容としては、仙台市や新潟市などの自治体が所有する蓄電池設備の遠隔制御により、需要家側のエネルギーリソースを制御して、電力需給バランスをコントロールすることが可能かどうかの検証を計画しています。実際に2023年9月より、仙台市泉区の泉パークタウン朝日地区で実証を開始しています。

国内VPP/DR支援の全体市場

出典:エネルギー安定供給と再生可能エネルギー利用普及を促進する VPPプラットフォーム&DR支援ソリューション市場動向 2023年度版. (2023, May 26). デロイトトーマツ ミック経済研究所. (参照2024.09.04)を基に弊社作成

まとめ

今回は、分散したエネルギーリソースをつなぎ合わせ電力の需給バランスを調整することができるVPPについてご紹介しました。国内でもVPPが注目されており、今後さらに市場拡大が加速していくと考えられます。またさらにVPPやDRの技術が発達していけば、再生可能エネルギーの導入拡大や発電・設備コストの削減によりカーボンニュートラルの実現にも大きく貢献すると考えられます。今後VPPの知識をより深めたり活用したりしていく際に、少しでもお役に立てていただければ幸いです。

【監修者のプロフィール】

 CDP回答やGHG排出量算定など、環境経営に関するコンサルティングサービスの営業本部長を務めています。

出典>

VPP・DRとは. (2023, August 16). 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)

ディマンド・リスポンスってなに?. (2022, June 29). 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)

エネルギー・リソースアグリゲーション・ビジネスハンドブック. 資源エネルギー庁. (参照2024.09.04)

VPP(仮想発電所)とは. 東北電力. (参照2024.09.04)

世界最大規模のVPP事業者 Next Kraftwerke社との戦略的な連携. 東北電力. (参照2024.09.04)

省エネ法が変わります.資源エネルギー庁. (参照2024.09.18)

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